2006/03/01
「巨大鍋」


今回の話は私自身の話じゃなくて、
プライベートでも親友のガイド、Mちゃんの他館先での出来事です。

他館とは、
お客様が泊まるホテルが満室などの場合に、
乗務員が他のランクの落ちるホテルや民宿に泊まる事です。
(添乗員はお客様のお世話があるので、基本的に他館はありません)


ホテルを発つ朝、ロビーにて

「MoMoちゃ〜ん、お腹空いて死にそぉ〜」
「どうしたの? Mちゃん、朝ごはん食べてないの?」
「ううん、昨夜から何も食べてないの」
「へっ、何で?」


昨夜、
Mちゃんが案内された他館先は民宿だったのですが、
民宿と言うより普通の民家って感じのところだったそうです。
それも
80才位のおばあちゃんが一人で切り盛りしている様子。
案の定、
廊下や階段、部屋の掃除も十分には行き届いていません。

「まっ、仕方ないか。おばあちゃんが一人でしてるんだもんね。」

・・・と自分を納得させ、
服を着替えて食事場所(居間?)に降りていくと
折りたたみの長机(公民館にあるような)がデェ〜ンと置いてあって
「給食でも作るの?」
・・・と思うような大きな鍋が一つ机の真ん中にドォ〜ン!
どうやら
一つの巨大鍋を初対面の他社乗務員十数人と共に食べるようです。

「知らない人と一つの鍋はイヤだなぁ〜」

と彼女も思ったそうなんですが、
なにせ、80才位のおばあちゃんが一人で切り盛りしている様子。

「まっ、仕方ないか。おばあちゃんが一人でしてるんだもんね。」

・・・と自分を納得させると白菜を一口、

「うん?」

少し酸っぱい、漬物みたいな味・・・

「何、この味?」 (まさか腐ってるの??)

改めて白菜をよく見てみると、
粒コショウらしき黒いものが掛かってます。

「これが酸味の元???」

そう思いながらしげしげと見ていると
隣に座っていた他社のガイドさんが一言、

「あっ・・・この粒コショウ、手足がある」

その瞬間、
巨大鍋を囲んでいた十数人は凍り付いてしまったそうです。
彼女が恐る恐る鍋を覗いて見ると、
手足のついた粒コショウが無数に浮いています。

普通なら大騒ぎになるところですが、
なにせ、80才位のおばあちゃんが一人で切り盛りしているため、
誰も何も言わず、そのまま自室に戻ったそうです。

とは言え、
近くにコンビニ等の店舗は無く、
車が無いため市街地まで行く事も出来ません。
(一般的に他館先にはホテルの車で送迎する事になってます)

結局、
彼女をはじめ、その宿に泊まった十数人は
空腹のまま寝て、朝食も食べずにホテルに戻っきたそうです。
食中毒にでもなったら、お客様にご迷惑かけますもんね。

・・・で、

「それは大変だったねぇ〜、私、パンかおにぎり買って来たげる。」
「おにぎりにして! パンじゃ昼間でもたないかも・・・」
「はいはい」(~_~;)