2005/12/01
「期待 その1」


「えっ? 私が行くんですか?」
「あぁ、どこかでMoMoの話を聞いたらしくてな、悪いけど頼むよ」
「それは構いませんけど・・・」

この社員旅行・・・
先輩(男性)が新規契約した会社の旅行なんですが
何でも、
その会社の取引先に私の担当会社があったそうで、

「○○旅行ならMoMoちゃんって、いい子がいるよ」

・・・ってな話が出たとかで、
急遽、私が添乗員として行く事になったんです。
私の部署では企画〜添乗まで一貫して担当することが普通なので
添乗だけまわってくるというのは珍しいんです。
(忙しい時期にはツアーの応援をすることはありますが・・・)

「で、どこの会社から私のことを・・・」
「教えてくれないんだよね。 MoMoに直接言って驚かしたいって。」
「ふぅ〜ん、変なの?!」

これが私の添乗史上、
最低・最悪の意味不明クレーム旅行の始まりだったんです。
(前にもそんな話を紹介しましたね・・・変な奴って意外に多いんです)


・・・で、旅行当日
配車場所でお客様を待っていると、
突然、後ろから「ガバァー!」・・・と抱きつかれ胸を掴まれたんです。

「キャアー!」

必死で手を振りほどいて振向くと
60歳位の男性がヘラヘラしながら立ってるんです。

「えぇ〜子・・ちゅうだけあって、ええ胸しとんなぁ〜 姉ちゃん!」

へっ??
こ・・・こいつが今日のお客さま??
言葉を失って凍り付いていると、
今度は別の中年の男性が、後ろからお尻をわし掴み!

「やっ、止めてください! 一体、何なんですか!!」

「あっ、そうか、楽しみはバスに乗ってからって事やな」

「はぁ〜??」

そうなんです!
このバカヤロー共は何を勘違いしたのか、
私をコンパニオン(それもH系・・・)と思い込んでるんです。

そこで、
バスに乗ってからの挨拶の際に
「私は添乗員ですので・・・」と宣言したんですが・・・

「じゃー、姉ちゃんはどこまでヤラせてくれんのや〜」

大多数の社員の方々(若い方々)は
添乗員です・・・と言った事で理解して下さったようなんですが、
社長をはじめ幹部クラスの方々は全く理解して下さらないんです。

「いえ、私は添乗員ですので
 胸もお尻もダメです。手も握りませんし隣にも座りません。」

「じゃー、何のためお前を呼んだんや! ふざけんなぁー!」

バスの中は年配の方々の怒号の嵐・・・
若い方々は申し訳なさそうにうつむくだけ・・・

結局、
1泊2日の旅行の間中、
彼らは私の話を聞かないばかりか、
観光地等では集合時間も守らず、宴会の時間指定も無視、
マナーやモラルなんてカケラも無い傍若無人な行動をとるんです。
おまけに何処に行っても、何をするときも

「あの役立たずの女の責任や」
「胸ひとつ揉まさへん」
「普通の女みたいな顔しやがって」
「今に押し倒したるから覚えとけよぉ」

・・・と、
ずぅ〜と大声でわめき散らし続けるんです。
いい大人が何人も一緒になって・・・。
他の一般の旅行客にも迷惑だし、みっともないったらありゃしない!

若い方々が、
「すみません」
「申し訳ないです」
「こんな状況でも、ちゃんと仕事されるなんて立派ですね」
・・・と、
絶えず声を掛けて下さったのが唯一の救い・・って感じでした。


そして解散の時、
社長が捨て台詞のように一言・・・

「お前を紹介したのは、S(株)のM部長や
 こんな最低旅行になったんは全部お前の責任やからな
 どうなるか、覚悟しとけよぉ〜!」

げっ!
S(株)・・・M部長・・・
いつも台数口の大きな仕事を下さる超お得意様・・・
このバカ社長が言いたい放題したら大変な事になっちゃう。


翌朝、
定時に出社した私は(添乗の翌日は普段は遅出なのです)、
M部長にアポイントをとるためにS(株)にtel・・・
でも、
電話中ということで、後ほど電話をもらうという事に・・・

あぁ〜ん・・・
あのバカ社長からの電話だったら、どうしよぉ〜・・・

・・・・とオロオロしながら、次回へ続く