2015/10/10
「忘れ物」


先日、北海道の某リゾートホテルに行った時の事です。

フロントマンのAさんと打ち合わせ・・・というか雑談をしていて、

「あぁ〜、そういえば、
 半年ほど前ですが、いい勉強をさせて頂きましてね。」

「珍しいトラブルでもあったんですか。」

「トラブルと言うほどではないのですが、
 お客様から面白いクレームが入りましてね。」

というわけで、
今回の話は、その面白いクレームについてです。


その日、
チェックアウトしたお客様の部屋から、
カルティエのレディースの高級時計の忘れ物があったんです。

その部屋に宿泊されていたのは、40代のご夫婦
かなりの資産家といった雰囲気だったそうです。

Aさんはレジストレーションカードをチェック。
携帯電話の番号が書いてあったので、早速、お客様に電話をしました。

「お客様、時計のお忘れはございませんでしょうか。」

「あぁ〜、ありがとう。 彼女が忘れたようだ。
 ここからは戻るわけにもいかんから、家の方に送ってもらえますか」

「承知いたしました。」

Aさんは、腕時計を丁寧に梱包して、宿泊いただいた礼状を添えて、
レジストレーションカードの住所宛てにお送りしたそうです。


「それの何処に問題があるんですか。 完璧な対応じゃないですか。」

「いえ、それがですね。 
 郵送した2日後、奥様から電話があったんですよ

 『先日、主人はそちらのホテルに泊まったんですね? 
  相手の女性は誰ですか?』

 ・・・・って。 それは、もう、スゴイ剣幕で」


そうなんです。
そのお泊り、ご主人が愛人を連れての浮気旅行だったんです。

浮気旅行だったら、普通、本当の自宅の住所って書きませんよよね。
書くのであれば、愛人を住まわせているマンションの住所ですよね。

おまけに、
携帯に電話をして確認したのに、自宅に送るように言うなんて・・・


「どうして黙っているんですか?  
主人、泊まったんでしょ? 女は誰なの?」

「あっ、いえ、奥様・・・」

・・・と、何とかとりなそうとしたところ、
ご主人が奥様から電話を取り上げて

「君! 困るじゃないか! 私は、君のホテルには泊まっていないぞ!
 ホテル側の手違いで私の所に郵送したと、ちゃんと家内に説明しろ!」


とりあえず、
奥様には、誰かがご主人の名をかたったのでは・・・と、しどろもどろに説明。
その場は何とか落ち着いたそうですが・・・

仲直りしたのか、誤解は解けたのか、(誤解ではないのですが)
その後は全く奥様からの電話はないそうです。


「これからは、もっと慎重にと思いましたよ。」

「でも、浮気旅行ですか・・・とは聞けないですよね。」

「いえいえ、私達から見れば、普通の浮気旅行ならスグに分かります。
 今回のお2人の場合は、完全に馴染んでおられたのでご夫婦かと。
 あのお2人の場合は、5年や10年の付き合いじゃないと思いますね。」

さすがフロントマン、人を見る目がおありになる。