2007/02/15
「トイレ」


その日は、
何だかんだとドタバタしていて、
部屋に戻って一息ついたときには、
12時を大きくまわっていました。

「あぁ〜、疲れたぁ〜 風呂・・・風呂入って生き返ろ・・・」

ってなわけで、
大浴場へと廊下を歩いていると

ドン・・・ドン・・・

・・・と、
何かを叩くような音が聞こえてきたんです。
かすかな音だけど・・・

「何の音かしら??」

その音は私が歩を進めるにつれて、
少しずつ大きく、はっきりと聞こえ・・・

私が廊下の角を曲がった瞬間、

ドン!!!

ひときわ大きく鳴り響いたのです。

私は、とっさに音の方向に目を向けました。

「紳士用トイレ」

音は紳士用のトイレから聞こえてきていたのです。

私は、恐る恐るトイレを覗き込みました。

ホラー映画などで
女主人公がそんな行動をとったりしたら、
「何やってんの! 逃げなきゃダメじゃない!」
・・・って
絶対思うんだけど、
いざ、自分がその立場になってみると
その正体を確めずにはいられなかったんです。
(私だけかな? そういうの?)

「誰かいるんですか〜?」

私がトイレに向かって、そう声を掛けると
個室の中から聞き覚えのある男性の声・・

「あっ、MoMoちゃんか! 助かったぁ〜」

「えっ、Sさん? どうされたんですか?」

「そうそう、トイレのドアが開かないんだ、
 何か引っ掛かってるみたいで・・・ちょっと手伝ってくれないか」

見ると、
ドアは押して中に入るタイプ。
私はドアを思いっきり蹴飛ばしてみようと思い、

「Sさん、私、ドア、蹴っ飛ばしてみますから、
 ドアから出来るだけ離れてもらえますか?」

「おう、判った!」

次の瞬間、

ぎぃーーーー

ドアがゆっくりと開いたんです。

「へっ・・・??」

「あれ??」

「Sさん、もしかしたら、
 ドアを中から一生懸命押してたんじゃないでしょうね!!」

「あ、いや、まぁ・・・・」

話を聞いてみると
この酔っ払い親父は、30分近くドアを叩いていたとか・・・

「MoMoちゃ〜ん、この事、皆には黙っといて、かっこ悪いし・・・」

「はいはい」