「金縛り」
nomiyama さんの投稿
 (文章の一部について、MoMoが加筆修正いたしました)

25年くらい前の話です。
当時、私は北九州市の旅行会社に勤務しておりまして、
担当は八幡地区の小学校を営業地区に活動しておりました。

とある小学校の別府への修学旅行に添乗した時のことです。
その日は新人研修もかねて新人と二人で乗務しました。
修学旅行ですから200人以上の大所帯、
宿泊場所の某温泉旅館が満室になってしまったので、
私達二人は、その隣の旅館に泊まる事になったのです。

小学校の添乗の仕事は(ま、添乗の仕事はどれも大変なんですが)、
交通整理、お風呂の番、夕食、朝食の世話・・・・・、
どれも怪我や火傷をさせない為に、つきっきりのお世話になります。
もう、疲れること、疲れること。
 ( わかるぅ〜・・・MoMoが修学旅行の添乗が嫌な理由もソレだもん )
おまけに今回は、
新人の面倒までみなくてはならないし・・・・。

そんなこんなで先生方の夕食が終わり、
隣の旅館に新人と二人案内され、部屋に通されました。
木造モルタルの二階建、
確か二階の西側、別府湾をみて山手のほうの角部屋。
部屋番号は202号
板張りドアを開けると、六畳の和室に西側に窓があり
電気の光に照らされて湯煙が見えていました。

私は多少霊感は在る方なんですが、
この日は疲れていたこともあり10時前には眠ってしまっていました。
何時くらいかはっきりしませんが、
隣に寝ていた新人の立ち上がる気配に目を覚ましました。

「う〜ん・・便所か?」
「はい、トイレに行ってきます」

彼は部屋を出て行き、
廊下を歩く音、トイレを開ける音、タイルに響く下駄の音・・・を
聞きながら、そのまま眠りにつこうとしていると、
部屋のドアがスーッと開く気配がしたので、
「早かったな」・・・・と、声をかけようととした瞬間、
突然、金縛りにあってしまったんです。

体は動かないのですが、頭の自由だけはききました。
顔をドアの方に向け、思い切って目を開けると、
白っぽい浴衣の様な着物をきた女が立っていたんです。

「で、出た!!」

今までも
人の気配(?)を感じた後に金縛りに会った事はありますが
怖いので目を開けた事はありませんでした。
今回は連れがいた事と仕事で気を張っていたので、
つい目を開けてしまったのです。

その女は
足も動かさず滑る様な感じで私に近づき
私の顔をを覗き見ながら私の頭の所を通って足元に立ちました。
顔の表情はぼんやりとして判りませんが、
目がこちらを見ている事はハッキリと判ります。

その女は
無言で立っていましたが私の体の上に乗って来たのです。
不思議と重さは感じませんでした。

「明日もきつい仕事があるんだから消えてくれ」

・・・と心の中で何回も何回叫んでいると
ふいに体スーッと軽くなり金縛りも解けました。

それから、
すぐに新人が戻ってきました。
あまりに遅かったので、本人に聞くと、
急にお腹の調子が悪くなって、トイレで粘っていたとの事。

あれは夢だったのでしょうか?
朝旅館の親父に問質したのですが、
一瞬口ごもって・・・・その後は何を聞いても無視されました。