「葬儀場」
三毛犬さんの投稿
(原文のまま)


十年程前に母親が亡くなりました。

自宅で仮通夜を済ませて、
葬儀場と火葬場が一緒になっている施設に運びました。

その夜、
みんな帰ってしまい、私一人になってしまいました。

たった一人で、母親のそばにいるのは寂しいものです。

従兄弟が来るはずでしたが、来ません。

夜中の2時頃でしょうか
人の声のようなものがボソボソと聞こえてきました。

誰か来たのかと、あたりを見回しましたが誰もいません。

ちょっと怖くなってしまい、酒を飲みましたが味もわかりません。

そのうちにトイレに行きたくなり、扉を開けて部屋の外に出ると、
人の声のようなものが隣りの部屋から聞こえてきます。

しかし、そこには誰もいないはずなのです。

だって、その日は、
その施設には自分しか居ないのですから。

もちろん、扉を開けて確認する勇気はありません。

小用を済ませて部屋に戻って、
また酒を飲んで寝ようとしましたが、とても眠れるモノではありません。

酒がなくなった頃、夜が明けてきました。

そのうちに守衛さんが出勤してこられました。

しばらくすると、
家族や親戚も来てほっと一息つきました。

私は、夜中の出来事を話しましたが誰も信用してくれません。
しかし、親戚の一人がポツリと言いました。

「連れて行かれなくて良かったな。お母さんが守ってくれたんだよ」

・・・と。

こんな場所では絶対に一人にはならない事だそうです。