「落し物」
ガイドのFさんの体験談
(原文のまま)


その仕事は日帰りの霊場めぐりだった。

朝早く出発して、いくつもの霊場を周る、
結構、運転手やガイドにとって疲れる仕事です。

最後の霊場の駐車場で、待機していると
バスのステップ(バスの階段)の所に小さな数珠が落ちてます。

「お客様の落し物かしら」

お客様が全員帰ってきて、帰りの車内

「どなたか、お数珠を落されていませんか?」

シーン

誰も返事がありません


「あれぇ〜、バスのステップに落ちてたんですけど・・・」

・・・言うと、お客様達は

「それ、小さいしおもちゃじゃないの〜」

「ガイドさん貰っとき〜」


そのうち、バスは解散場所に到着


「みなさま、到着です、お疲れ様でした」

「ありがとうねぇ〜」
「さようなら〜」

会社への回送中の車内で、私は数珠を見ながら運転手に

「これ、どうしましょう?」

「どうせおもちゃやなんだから捨てたらええやん」

「そうですね」

・・・と、ゴミ箱にポイっ。

しばらくして、踏み切りに差し掛かった。

カンカンカン、

バスは踏み切りで止まらず、ジリジリと線路に入ろうとしています。

「どうしたんですか? 危ないじゃないですか」

「ブレーキ踏んでるんだけど、誰かに押されてるみたいに・・・」

ふとミラーを見ると、
どうみてもこの世のものではない者達が、

バスを左右や後ろで押しています。

「逃げよう!!」

でも扉も窓も開かない。

バスは踏み切りのど真ん中。

「ぶつかる!!きゃー!!」

するとパッチーンと音がした。

見るとそこは踏切ではない、交差点でした。

「今のは何?」

二人とも汗がびっしょり。

会社に帰ってゴミ箱を見たら、
ゴミ箱の中で、数珠が切れてバラバラになっていた。

詳しい事はわからないけど、
その数珠が何か関係があるに違いないと思い、
スグにその霊場に行って、バラバラになった数珠を納めてきました。