「お礼」
コットンさんの投稿
 (文章の一部について、MoMoが加筆修正いたしました)

私が23歳の時だとはっきり記憶しています。

私が東京の会社をやめて、田舎で就職しようとしていた時です。

何かの縁で知り合いが病院の事務を紹介してくれました。

給料は東京と大きく変わらないので、
軽い気持ちで面談試験を受け採用となりました。

ただ、
仕事が警備を兼ね隔日勤務で1日は泊まり込む・・・が条件でした。

事務室は玄関口にありますが
夜間の宿泊室は病室の一番奥まったところの6畳間でした。

病室は個室で、
廊下の電灯は一つ置きで薄暗くよい気分ではありませんが、
私も空手の黒帯で、若かったこともあり、怖くは感じませんでした。

ある時、
夜更けに変死を遂げた患者やが収容されましたが、
時間が遅いこともあって、警察から

『明日に検視するので、病院で朝まで保管しておいてくれ』

・・・との依頼。

当時、その病院には安置室がなかったので、
遺体は空いている病室に運びました。

間近で遺体を見ると云うのは気味の悪いものでしたが
病院である以上、当たり前なんだろうと考えて、
軽く寝酒して床に入りました。

ウトウトし始めてしばらくすると、

トン、トン

ドアをたたく音がします。

こんな時間に誰だろうと・・・と廊下に出てみましたか誰もいません。

首をかしげながら床に戻ると、
また、

トン、トン

それが何度も続いたので、
軽くよっていた勢いもあり病室の見回り行くと
先ほどの死体を収容した部屋の電気がついていました。

「何で、電気がついてるんだ?」

・・・と、
電気を消そうと部屋に入った、その時!

『ウぅ〜〜ぅ・・・』

・・・という唸り声と共に、
先程運び込んだ遺体の上半身がベッドから立ち上がったのです。

「うわぁーー!!」

なんとも表現できない恐怖で部屋に駆け戻り、1夜をすごし、
翌日に看護婦さんに聞くと、

「この病院の先生は、困った人がいれば、
 お金のなかったり、他の病院で拒否される人でも受入れるから、
 貴方にもお礼を言いたかったのよ」

・・・と言われました。

今は、その先生も老先生となっていますが、
病院は相変わらずの人気で、私も通院しています。

ただ、
あの時の死人が声を出して半身起き上がった事実は、
今も私の記憶に強く残っています。