「メリーさん」
氷雨さんの投稿
(原文のまま)


これは、ウチのオヤジとその友人の人達から聞いた話で、
当時オヤジはまだ大学1年で、今から40年近く前の事です。

その頃、
オヤジはナンパ三昧で朝帰りを繰り返していたそうなんですが、
ある日、
始発で家に帰ろうと、横浜の山下公園付近を駅に向かって歩き、
公園の入口に近いトイレを通り過ぎようとした時、

『………ろす』
『……し……』

・・・と、

誰かと話しているような呟いているような声が微かに聞こえ、
声の方を何気無く振り向いたそうです。

すると
そこには、半分程度白髪のうつむき加減な、

『お婆さん』(?)

・・・が、
トイレの前のベンチに座って何やら呟いて居たそうです。

『ホームレス・・・?』

一目見た時はそう思ったそうですが、

何故か目を反らせず、

よくよく見てみると、

髪が伸び放題なところ以外は、むしろ清潔感があるぐらいの格好で、

『ホームレス・・・じゃないなぁ〜
 でも・・・何かに似てるなぁ〜?』

そうぼんやり思いつつ、

『まぁいいや』

・・・と歩き出そうとした時、
また、

『……ろす』
『…や……し…』

・・・と、
聴こえて来て、振り向いた時に
そのお婆さんと目があいニタァ〜と笑いかけられたそうです。

さすがに気味が悪くなったオヤジは走るように家に帰り、
その日の大学で

『今日さぁ…』

・・・と、
早朝の出来事を仲間に話した所、

『あぁ〜、メリーさんだろ?』

・・・と言われたそうです。

オヤジは知らなかったそうですが、
その友人の話によると横浜駅周辺や関内周辺に、
いつの頃からか

『羊飼いのメリーさん』

・・・の様な格好をしたお婆さんが現れて
1日中ベンチやイスで『〇〇ころす』や『〇〇死ね』と呪っていると
言う噂や見たと言う話しがかなり流れていたそうです。

…ただ、

何があって?
とかなんで呪っている?

とかは誰も知らなかったそうです…。

それ以降、
オヤジは笑いかけられたのがよっぽど気味悪かったのか、
朝帰りはあまりしなくなり
『メリーさん』も見なかったそうですが、

地元周辺では相変わらず噂は絶えなかったそうです。

時が流れて、
去年の夏過ぎ頃に
両親が静岡のとある温泉へ旅行に行ったのですが、
その時に駅の側のベンチにオヤジが昔見たまんまの
『メリーさん』が座って居て

『……ろす』
『……ろす』

・・・と
呟きながらオヤジの方を見てニタァ〜と笑ったそうです…。