「スターター音」
アキさんの投稿
 (文章の一部について、MoMoが加筆修正いたしました)


もう数十年前の話ですが、
自分が学生時代に体験した不思議で少し切ない体験を投稿します。

当時、
地元から遠く離れたS市の大学に通っていた私は、
学生用の安アパートに下宿していました。

そのアパートの先輩もとても親切で、
また、
趣味がオートバイということもあり、次第に仲良くなっていきました。

大学の試験休みの最中、
夜遅くにバイトから帰ってくると先輩のバイクがありませんでした。

「何処かに遊びに行っているのかな。」

・・・と思い、
自分の部屋に戻って寝ることにしました。


午前0時過ぎでしょうか、
窓の外で、
先輩がオートバイを始動する特徴のある音が聞こえてきました。
・・・が、
いっこうにエンジンがかかる様子がありません。

その音も、そのうち、聞こえなくなって・・・
私は、ウトウトしながら

「先輩、帰ってきたのかなぁ〜?」

「また、どこかに出かけたのかなぁ〜?」

と考えていました。

翌日、
学校の講義から下宿に帰ってくると、
他の先輩達が玄関先に集まって話をしていました。

そこで、
先輩がバイクの自損事故で亡くなった事を初めて知りました。

後から聞いた親御様の話では、
先輩は事故で無くなった夜にオートバイで実家(H県)に帰る途中
午前0時過ぎに自損事故を起こして病院で亡くなったそうです。

ちょうど、
窓の外で先輩のバイクのエンジンをかける音がしていた時間でした。