「隣人」
流星群@福岡さんの投稿
 (投稿原稿の内容を尊重しつつMoMoが一部リライトいたしました)


私が、今の家に引っ越してきたのは、今から7年ほど前の事です。

当時、隣の家には、
年配のご夫婦と一人息子の3人が暮らしておられました。

ご主人は、週に一度くらいの割合で一人で外出をされていました。
いつもよりちょっとオシャレをして意気揚々って感じで

どちらに行かれるのかは知りませんでしたが、

「週に一度のお出かけが何より楽しみなのだろうな」

・・・と、思ってました。

いつも、にこやかに挨拶をされる、穏やかな感じの方でした。

しかし、
半年ほど経った頃、
そのご主人が体調を崩され、入退院を繰り返すこととなり、
嬉々として出かける姿も見られなくなりました。

そして、ある時、
私が庭で洗濯物を干していると

「バタン!」

・・・と、
隣家の玄関のドアが閉まる音がしたので振り返ると、
少し急ぎがちにご主人が出かける姿が見えました。

「あ、退院して体調が良くなったんだ」

・・・と思い、
お声をかけようかとも思ったのですが、
何か急いでおられるようだったので、挨拶はしませんでした。

ご主人のほうも、
私に気付いてない様子で、まっすぐ前を向いて歩いて行かれました。

何と言いますか、
お声をかけて良い様な雰囲気ではなかったんですよね


それから数日後

私が外で片づけものをしていると、
隣家の奥様が、

「こんにちは。 
 ちょうど一区切りついたので、お知らせと思いまして・・・」

「なんでしょうか??」

「実は、主人が亡くなりまして・・・・」


奥様のお話によると、
ご主人は体力の問題もあって手術が難しく、
しかたなく通常の治療に頼りながら入退院を繰り返していたそうです。
そして、
ここ数カ月はずっと入院されていて、退院する事なくそのまま・・・・

でも、私、
数日前に、この目ではっきりと見たんです。
足早に外出されるご主人の姿を・・・

そして、この耳で聞いたんです。
砂利を踏む

「ジャッ ジャッ」

・・・と言う音を。