「オルガン」
大阪府 ジョニーの投稿
 (文章の一部について、MoMoが加筆修正いたしました)


30数年前、
学生時代の体験です。

地方から出てきた友人が、
2人で借りている南海高野線の北野田駅近くの
一戸建に泊まった時の事です。
そこは、

「2階の2部屋のうち、
 オルガンの置いてある右の部屋だけは使わないでくれ」

・・・という条件の代わりに、
一軒丸ごとで1万五千円という恐ろしく安い家賃でした。

友人の一人は1階、
もう一人は2階の左の部屋に住んでいました。
私は1階の部屋に寝る事になりました。

夜中の12時頃だったでしょか・・

【誰かが、2階から降りてきては玄関を出て行き、
 しばらくすると、また、玄関から入ってきて2階に上がって行く・・・】

そういった物音に、私は目を覚ましたんです。

その誰かは、
その行動を何回も何回も繰り返すのです。
そして、
ついには、2階のオルガンの音まで鳴り出す始末。

2階の友人が悪ふざけでもしているのかと、
隣で寝ている友人の一人を起こし、2階に上がると、
2階の友人は、ぐっすりと眠っています。

「おい、それじゃ、このオルガンの音は何だ?」

「さぁ〜、今まで、こんな事なかったし・・・」

私達2人は、2階の友人も起こし、
3人でオルガンの鳴っている部屋に入りました。

すると、
オルガンの音がピタッ・・・と止み、
部屋は何事もなかったように静まり返ります。

「ど、どういうことだ?」

私達が、恐る恐る部屋を見渡すと、

奥の押入れ(奥行きが30cm程しかない)から、

女性の真っ白な手が・・・・・。

「うわぁーー!!」

3人とも我先に1階に駆け下り、まんじりともせず朝を迎えました。


その後、
北野田駅前は再開発の為、
この家も取り壊す事になったのですが、
何故か、事故が頻発し最初の共同企業体は解散に追い込まれ、
後を引き継いだ建設会社も、この家には手出しできませんでした。

お暇でしたら北野田に行って見てください。

一軒の民家をよけて、凹型に建設されたジャスコが立っています。