「ホテルのドア」
福岡市 Tomcatさんの投稿
 (文章の一部について、MoMoが加筆修正いたしました)


私も仕事柄(営業職)ですので良く地方に宿泊します。
長崎県の全国的に有名なS半島、O温泉地で体験した話です。

そのビジネスホテルは三階立ての何の変哲の無い宿です。
そこの売りは、
料金は普通ですが、施設内に源泉(塩泉)を直接引いてあり、
24時間無料で大浴場(10名位入浴可能)が使用出来ること。
それと、
男性諸君には魅力的な、その手のビデオが24時間無料!

仕事の関係で、約3年近く通っていました。

しかし、
宿泊している間に数回 おかしいなーと思う日が数日ありました。
それは、
夜中(1時〜2時前後)の時間に
二階でドアを激しく開け閉めしている音で目覚めるのです。

それも、
特定の部屋のドアではなく、全ての部屋のドアが、

バターン ドターン

・・・と、
部屋番号順(?)にドアの開け閉めが繰り返されるんです。

私の場合は、大抵、三階のシングルルームに通されていたので、
特に2階の音が響いて来て、

「何なんだろ〜??」

・・・と、不思議に思っていたのです。

しかし、
ある日、二階のサウナ室付きの4人部屋に通されたんです。

そして・・・そう、あのドアを激しく開け閉めする実態が判ったのです。

深夜一時〜二時に間だったと思います。
突然、

『バァーン!』

・・・と、
部屋のドアが開いたかと思うと、
浴衣を着て、目を真赤に血走らせたパンチパーマの男性が、
ドアから此方に向けて人間と思えないスピードで
一目散に私に向かって走ってきたのです。

青白い顔・・・
そして、
浴衣から見える胸元には贅肉が無くガリガリ、
頬肉、顔肉は全て殺ぎ落とされていて、
目だけが赤く真赤に充血した瞳・・・・

「あ、あぁ〜〜」

悲鳴にもならない声を上げた時には、
その男は、既に、ベッドの横に立っていました。

「あ、あの・・・へ、部屋間違えてますよ。 ここは僕の・・・」

今考えると、
何とも滑稽な話ですが、恐怖で混乱している私の精一杯の言葉でした。

すると男は、

『ニヤリ』

・・・と、
笑いとも言えない暗い笑みを残し、部屋を出て行ったんです。

そして、
隣りの部屋・・・また隣りの部屋・・・・と、ドアを開ける音が・・・

ちなみに、
このホテルの部屋のドアはオートロックで、チェーンも付いています。
外部から開けて、部屋に入ってこれるはずはないのです。