「護衛艦」
○×3曹さんの投稿
 (文章の一部について、MoMoが加筆修正いたしました)


もう20余年も前の事になりますが、
私が海自で護衛艦Tに乗組んでいた時の話です。

訓練航海中のある夜、
就寝中に妙な息苦しさを覚えて目が覚めたんです。
腕時計で時刻を確認すると、0230時(午前2時半)。

「当直の交代まであと30分かぁ・・・・
 仕方が無い、早めに交代しに行くか。」

・・・と思い、
寝台から出ようとして体の向きを変えたとき、
私の寝台を覗き込んでいる人と目が合いました。

前直者が次直を起こしにくるのは
交代の15分前と決まっているのですが、
その時は
フライングで15分早く起こしにきたのかと思ったのですが・・・

「あれ?帽子が白い??」

寝台を覗き込んでいる人は白い帽子と事業服を着ているのです。
(昭和50年代以降の海曹・海士の作業服は青なんです。)

「服が違う」

・・・と言う事に気が付いたとき、頭の中に声が響きました。

「貴様は誰だ。ここは俺の寝台だ。」

寝台を覗き込んでいる人とは目が合ったままでしたが、
口を開いたようには見えません。
声も耳から聞こえていると言うよりも、
頭に直接響いているような感じでした。

思わず、

「砲術科○×3曹です!すみません!」

・・・と、
小声で叫び寝台から飛び降りたのですが。。
3段ベッドの中段から飛び出したにも関わらず、
何かに触れたような感触も無くて・・
ビックリはしたのですが、なぜか恐怖は全く感じませんでした。

実は、
護衛艦Tは昭和38年に
民間船に衝突されて5名の殉職者をだしているんです。
夜間の衝突事故で、就寝中に押しつぶされて。

結局、

「職務をサボったりしなければ、悪さはしないよ。
 いずれにしても俺たちの先輩なんだし。」

・・・という先輩海曹の言葉に従って、
護衛艦から練習艦に種別変更されるまでTで勤務しました。
(さすがに寝台だけは空いていた最下段に変えてもらいました)

しかし、
「自縛霊」って、「土地」ではなくて「物」にも憑くのですかね?
少々不思議です。
(護衛艦Tが事故ったのは浦賀水道入口付近、この体験は四国沖。)

ちなみに、
護衛艦Tは練習艦→特務艦と種別変更され、
平成4年に除籍、現在は既に解体されています。