「避難小屋」
東京都 さとぼーさんの投稿
(原文のまま)


20年ほど前の早春、
中央本線初狩駅の北にある滝子山に登った時の事です。
5人ほどのグループでの山行で、
滝子山近辺の避難小屋に一泊する予定でした。

避難小屋に入ったのがその日の夕方です。
小屋の周囲には数日前に降った雪が積もり、
夜にはかなりの冷え込みでした。
私達はお酒も少し入り、
翌朝が早いので早めに寝袋に入りました。

明け方、少し明るくなってきた頃、
入り口のドアを誰かがノックしています。

トントン・・・トントン・・・トントン・・・

もちろん避難小屋なので、施錠していませんし、
ボロ小屋なのでドアを押せば開きます。

しかし、
誰かはドアも開けようとせず、ノックは続きます。

トントン・・・トントン・・・トントン・・・

寝袋の中で、
「何で入ってこないんだろう?」
と思ったのですが、眠いのでそのまま無視しておりました。

すると、ノックが止み、
小屋の周りの雪の上を、何周も何周も歩いて廻る足音が聞こえます。

サクッ・・・サクッ・・・サクッ・・・サクッ・・・

「どうして、ドアを開けて入ってこないだ? 嫌がらせか??」

・・・とも思いましたが、
しばらくすると足音も止んだので、そのまま寝入ってしまいました。

翌朝、
皆が起きて、朝食の準備をしていたとき、

「明け方、誰かがノックしたよね?」
「小屋の周りを歩いてたよね?」

・・・と、
3人ほどが明け方の出来事を知っていました。

朝食も済み、
準備も終わって小屋の外に出たとき、
小屋の入り口には自分たちの足跡があるのですが、
小屋の周囲の雪の上には、足跡はありませんでした。

あの足音は何だったのでしょうか???