「夜警」
akashyaさんの投稿
 (投稿原稿の内容を尊重しつつMoMoがリライトいたしました)


彼女から聞いた話です。

彼女の母親はホテルで女中をしているのですが、
働いているホテルというのが、いわく有りげ場所だそうで、
従業員が奇妙な体験をしたり、お客様から苦情が来るそうです。

そのホテルは、S県A温泉のホテルS。
以前はDと云う名前で営業をしていたそうなんですが、
火事を起こして宿泊客が数人亡くなると言う大惨事が有って、
その後、
立て直してホテルSとして営業を再開したそうなんです。

去年入った新人の警備員の体験談です。

ある日の深夜、
彼が2階の見廻りをしていた時のことです。
(2階には宴会場と小さい部屋が幾つかあります。)

真っ暗な廊下の向こうから足音がしたのです。

「誰かいるんですか?」

彼はそう声をかけながら、
足音のする方へ懐中電灯を向けたのですが誰もいません。

「気のせいか・・・?」

彼が首をかしげながらエレベーターに乗ろうとした、
その瞬間、
足音が聞こえた近くの部屋から大きなTVの音が聞こえて来たんです。

「あれ、さっきの足音の人かな?」

彼は音がする部屋に向かいました。
余りに音が大きいので、音を下げるようにお願いしようと思ったんです。

コン、コン!

「お客様、申し訳ございませんが、深夜ですので、TVの音を・・・」

・・・・と、
部屋の中から怒気の含んだ男性の大きな声が・・・

「うるさい! 俺に口出しするな!」

彼は一瞬、身の危険を感じたそうですが、
しばらくするとテレビの音は消え、
部屋の中から人の気配も消えたそうです。

「寝たのかな?」

その後は何のトラブルも無く、無事に巡回も終了したそうです。
そして、
翌朝、昨夜の報告をしたところ

「2階の部屋は客室として使われていないぞ。テレビもないし・・・。」