「キャンプ場にて」
望月さんの投稿
 (文章の一部について、MoMoが加筆修正いたしました)


もう20年以上前の話です。
僕が中学一年の時、学校から行った一泊二日の宿泊訓練で
「肝試し」をした時の事です。

僕達のクラスは、
高い杉林を抜けて、スタート地点に帰ってくるコースでした。
お化け役は3人、他は、男女別で3人1組、男組と女組が交互に出発。
運悪く(運よく?)、僕の組は先頭です。

しばらく行くと
杉の大木の陰からF君が大声で飛び出して来ました。
少しは驚いたものの

「もうちょっと何とかならないか? それじゃ〜怖くねーぞ!」

・・・なんて、
ダメ出ししながら歩き出すと、
二人目のお化け役のS君が前から凄い勢いで走ってきます。
そして僕らに

「ヤバイ! 出た出た! 引き返せ!」

・・・と叫んでいます。

「ベタな演出ぅ〜?!」

・・・と思ってた僕らも、
S君の表情から只ならぬ事態と感じた僕らは、
今歩いてきた方向に向かって、
突き飛ばされたかのように走り出したんです。

見ると、1人目のお化けのF君が、上を見上げて立ち尽くしています。
その脇を皆で走り抜けながら、

「F! 何やってんだ! お前も逃げろ!」

スタート地点に着くと、
クラスメート達は逃げ帰った僕らを見て大笑い。
でも、
普段はお調子者のS君が初めて見せる真剣な訴えかけに、
皆も次第に耳を傾けていきました。
 
S君の話では、
10mくらい後方の木々の間から煙が上がってるのに気付き、
何事かと見ていたら、その煙がゆっくりと這うように近付いてきて、
2〜3m位まで来た時に、
その煙が人の上半身の姿に変わっていったとか。
 
するとF君が
「それ、俺も見た! 林の上を飛んでた!」

その時、
3人目のお化け役の泣きながら帰ってきて、

「何でお前ら誰も来ないんだよ!
 誰も周りにいないのに、そこら中から話し声がして・・・」
 
この後、
肝試しは中止になりました。

それから、実は、この話には後日談があるんです。
「煙」と最初に遭遇したS君のお父さんが夏休み終了間際に、
そして10月には、林の上を飛ぶ煙を見た君のお父さんが、
共に脳卒中で亡くなってしまったのです。
もちろん、
2人とも、普通なら脳卒中で倒れるような年齢じゃありません。
 
キャンプでの出来事を思い出して、
11月頃に、この事を母に話したら、

「あんたは見なかっただろうね!」

・・・と、
言われましたが・・・私にはその時の母の顔の方が怖かったです。