「谷川岳」
栗蔵さんの投稿
 (投稿原稿の内容を尊重しつつMoMoがリライトいたしました)


高校1年の頃でしたか、
丁度、梅雨が終わりかけの7月初旬、
バレー部の合宿も終わり一段落している時の事、
合宿に顔を出した先輩2人(大学でワンダーフォーゲル部に所属)から、

「体力と精神を鍛えるために山に登らないか!」

・・・と誘われ、
谷川岳に登ることになったんです。

メンバーは、
先輩2人に僕と友人2人の5人。

登山は初心者の僕達3人には、想像以上にきつく、
すぐに、息も絶え絶え・・・

「何だ、お前達、もうへばったのか! 
 もう少し登ったら見晴らしの良い岩場があるから、それまで頑張れ!」

「は、はい!」

そんな時、
友人の1人が歩きながら飲んでいた水筒のフタを落としたんです。
フタは坂をコロコロ転がり、3〜40m落ちた辺りで止まったようでした。

「ちょっと取って来るんで、先に行って、休憩してて下さい」

「判った、気をつけろよ!」

数分後、
僕達4人は岩場に到着、彼を待つことに・・・。
しかし、
10分経っても15分経っても、友人は戻ってきません。
フタの落ちた場所からこの岩場までは一本道で迷う事はありません。
そこで、
僕と先輩の2人で、彼を迎えに行ったんです。

「たしかこの辺だったよな」
「知樹ぃ〜!」

しかし、
返事がありません。
登山道の脇の斜面に注意しながら降りていくと、
斜面の下に友人のヤッケが見えたんです。

「大丈夫か? 怪我でもしたのか?」

斜面を駆け降りていくと
友人は真っ青な顔をしています。 

「どうしたんだ?」

「足を捕まれて、引きずられて・・・今も誰かが俺の足を・・・」

「ま、まさか?!」

足元を見ると、
めくれ上がったズボンの足首からふくらはぎにかけて、
手の後がはっきりと!!

友達は、
その後、1週間熱にうなされ続けました。
後から聞いた話ですが、フタを拾おうとした時に

「拾っちゃうの・・・」

と言われた様な気がして、
次の瞬間には、足を掴まれ、斜面の下に引きづり込まれたそうです。