「ビジネスホテル」
Kamyさんの投稿
 (投稿原稿の内容を尊重しつつMoMoがリライトいたしました)


数年前、
彼女と二人で青春18切符と格安ホテルをとって広島に行きました。
途中下車を繰り返し、
午後8時くらいに広島に到着しました。

ホテルは広島駅から徒歩10分くらいの立地で、
ビルにはさまれた狭い敷地に建てられた、
これと言って何の特徴もない小さなビジネスホテルですが、
小ぎれいで感じも良いホテルだと思いました。

私達が予約した部屋は格安のセミダブルで、
何階かは忘れましたがフロアの一番端の非常口そばの部屋でした。
部屋の中は、暗い印象があり何となく寒い感じがありました。

夕食は近所の商店街で美味しい広島焼きを食べ、
ユニットバスでシャワーを済まし、
二人でベッドへ・・・

その後
彼女に腕枕をしながら、
お互いに独り言のように会話・・・、徐々に意識も遠のいて、
完全に寝入ろうとしている時でした。

午前2時頃だったと思います。
ベッドのすぐ横あたりで何かゴソゴソと気配がするのです。

当然、
この部屋には彼女と私しかいません。
そして、
彼女は僕の腕枕の中で寝息を立てています。

そのうち、
その気配は、

「トタ、トタ、トタ・・・」

と、
足音を立てながらベッドルームを横切り、
部屋に隣接するユニットバスに向かい、そのドアを

「キィッ・・・」

という、
微かな音とともに開けたのです。

「ゴト、ゴト・・・」 (シャワーホースをいじってる?)
「シャァーー・・・」 (シャワーの水量を上げ音)

その時、彼女が、

「ねぇ、隣の部屋の人、こんな遅い時間にシャワー浴びてるのね。」

彼女は、隣の部屋の音が聞こえていると思っているんです。
でも、
いくら小さなビジネスホテルだと言っても、
隣の部屋のシャワーがこんなにハッキリ聞こえるわけがありません。
しかし、
わざわざ真実を教えて、彼女を怖がらせることもないので、

「ホントだね」

・・・と答えたのです。
彼女は、そのまま、また寝息をたて始めます。

しばらくして、
シャワーの音が止みましたが、
ユニットバスからは誰も出てくる気配はしませんでした。