「祖父」
友梨さんの投稿
 (投稿原稿を参考にMoMoが再構成しました)


街に
リクルートスーツを着込んだ学生が多くなってきました。
この時期になると、
私はいつもある出来事を思い出すんです。

当時の私も
真新しいリクルートスーツに身を包んで、
地図を片手に、面接会場に出かける毎日を送っていました。

バブル後の失われた十年の最中、
納得いく就職先がなかなか見つからず、
気がつけば、既に12月を迎えていました。

友人達の多くは、
既に就職先が決まっていたり、
決まりまではしていなくとも、幾つか内定が出ていたり・・・。

私は精神的にも体力的にも疲労の極致といった状況でした。

そんなある日の事
私の夢枕に十年ほど前に亡くなった祖父が現れたんです。

「おじいちゃん」

「ゆり、大きくなったね。」

「うん。」

「ゆり、もう心配しなくていいからね。 
 お前の事はSに頼んでおいたから。」

「Sさん・・・??」

「さぁ、もう寝なさい。子供はいっぱい寝ないとね・・・」

「おじいちゃん」

その1ヵ月後、
思わぬことがきっかけで知り合った方に

「私の親戚が社長を務めているから、行ってみたらどうだ? 」

・・・と、
紹介されて、
憧れていた大手企業に就職が決まったんです。

そして、
その企業の社長の名前がSだったんです。