「沖縄での話」
池田宮崎さんの投稿
 (文章の一部について、MoMoが加筆修正いたしました)


数年前、
急な出張で沖縄に行く事になりました。
ちょうど五月の連休と重なり、
どこもホテルは満室で、なかなか予約がとれませんでした。

諦めかけていた時、
あるホテルに予約をとる事ができました。

そのホテルは、
繁華街の外れにあって、
ネオン好きな私にとっては願ったりかなったりでした。

当日、
2日分の支払いを済ませチェックインしたのですが、
そのホテル・・・おかしいんです。
連休中だというのに、どうも宿泊客が少ないようなんです。

私が通された部屋は和室で、
お世辞にも綺麗とは言いにくい、古い造りの部屋でした。
壁も薄く・・・というか、
元々宴会場だったのを薄い壁で仕切って部屋を作ったような感じです。

夕食後、
書類の整理をしていると
親子と思われる三人の話声が、隣室から聞こえてきました。
そんなに大きな声で話している風ではないのですが、
壁が薄いので結構聞こえてくるんです。

「これじゃ、仕事にならないな」

そう思った私はシャワーを浴びて、
ネオン街に飲みに出かけたんです。

帰ったのは夜中。
泡盛の酔いの勢いでぐっすり寝れると思いきや
隣室から親子の話し声が聞こえてきます。

「おいおい、良い子は9時に寝なきゃダメだろが」

そう呟きながら、
布団に大の字になった私の目に飛び込んできたのは
天井に広がる子供の足跡と手形・・・・。

「な、何??」

次の瞬間、
隣室の親子が歌を歌い始めたんです。
軍歌を・・・・

軍歌は
空が明るくなりかける頃まで続き
私はほとんど眠る事ができませんでした。

当然、
2日目の宿泊はキャンセル。
運良くべつのホテルに宿泊する事が出来たんです。

そして、
昨日飲んだ居酒屋で、
昨夜のホテルでの出来事を話すと、
居合わせた地元のお客さんが教えてくれたのです。

「あそこのホテルは、防空豪の上に立てられててな。
 その防空壕・・・爆弾の直撃を受けて沢山の人が亡くなったんだよ。」