「自衛官受難その2」
本厄当たり年さんの投稿
 (投稿原稿の内容を尊重しつつMoMoがリライトいたしました)


大学時代からの友人から聞いた話です。

彼は陸上自衛官で、
私達一般人が経験しないような様々な経験があるそうです。
その中の一つが夜間の山中行軍訓練。
まっ、
一般社会人が夜間の山中行軍なんてするわけがありませんよね。

この日の夜間行軍は
兵庫県宝塚市の山中で深夜2時過ぎに
横に30m間隔で一列の隊形で延々と歩くというもの。

深夜、それも新月の山中は全く視界が効かず、
仕事がら暗闇に慣れているとは言え、されはもう孤独感との戦いです。

おまけに、
行軍に出発する前に隊長から

「この宝塚の山中では、色々なものが見える事があるが、
 常に平常心を保ち、決して騒ぐことなく、隊列を乱す事のないように!
 もし、そのような事が有った場合は連帯責任とするぞ!!」

・・・と言われており、
隊員は皆、精神的に追い込まれ、声を出す事も出来ません。
(・・・ってか、何が見えるんだ? 何が?)

友人は平静を保ちつつ行軍していたのですが、
突然、右すぐ横を人が歩いている気配に気が付きました。

友人は、
「隣の奴が、知らず知らずのうちに近づいて来てしまったな」
・・・と
思ったのですが、どうもそこに人影はありません。
足元には枯葉が落ちているのにそれを踏みしめる音もしません。
しかし、
明らかに、そこには誰かが、何かがいる気配がするんです。
何といえばいいのか、息遣いの様な、そう言ったものを感じるのです。

友人は、
その気配を更に注意深く観察したそうです。
すると
その誰か、何かは、
友人を観察しているかのように
友人の歩くスピード、ペースに合わせて移動していたそうです。

そうこうするうちに
作戦上の目的地付近に到達、
仲間と合流する頃には、その気配は消えていたそうです。