「実家での出来事」
川崎市
H.Fの投稿です。

今年の新年に実家へ帰った折、体験したことをお話します。
確か、1月2日未明のことだったと思います。

寝ていると、奇妙な夢を見ました。
私のすぐ左隣に、肩を並べるような感じで男が一人立っています。
誰なのか、よく分かりませんが、全く未知という感じはしませんでした。

私はその男に連れられて、心霊スポット巡りをするのです。

最初は、以前事故で人死にがあったとかで幽霊の見えるという鉄道トンネルです。
ある駅のホームの端に立つと、そのトンネルがすぐそこで口を開けており、その亡くなった人の姿が、トンネル外壁に染みのようになって浮き出ています。

そして次は用水池です。
そこは、先の大戦中、米軍機の機銃掃射を受けて多数の死者が出たという場所だと言います。
連れられて行ってみると、果たして池は血まみれ、亡くなった方が何人も水の中に浮いて見えているのです。

そこで、私は目を覚ましました。
真っ暗闇です。何時でしょうか。分かりません。
少しずつ覚醒してくると、この夢の残滓と共に、
少々妙な感じを覚えました。
なんだろう。
金縛りはありません。
悪寒もありません。
目をこらしても、何も見えません。

と、その時、空間から音が聞こえました。
ちょうど、根太のゆるんだ床板を強く踏みつけたような音で、
「ぎゅぎゅぎゅっ」
という、太い音です。
出所は、私が横になっているベッドの足元の上の辺りでした。
そして、その後もしばらく、部屋の隅の辺りから
「ことことこと」
というかすかな音が聞こえていました。
その内に私はまた眠ってしまい、気が付いたら朝でした。

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 実家では、以前から他にも少し妙な事が起こっています。
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夜、姉が入浴しようと風呂場の電気を点けたが、
電球が切れているらしく、点かない。
姉は明朝入浴することにして、
電燈のスイッチはそのままに、部屋に引き取ってしまいました。

それから暫くの後、何も知らない母が風呂場へ来ると、
なぜか電燈が点っていたそうですが、母は姉が消し忘れたのだと
てっきり思いこんで入浴を済ませました。
時刻は深夜です。
脱衣場でドライヤーを使っていると、みな寝静まり静かなはずの家の中から、床板を踏む、かすかな音がします。
風呂場の傍に二階へ続く階段があるのですが、誰かがゆっくり、
そこを上って行くのです。
「だあれ?」
母は、脱衣場から顔を出してみたそうですが、誰もいなかったそうです。
なぜ電燈が点かなかったのかは、分かりません。

これもやはり入浴中のことです。
7年ほど前、私は大学を一度中退の上、
別の学校を受験すべく勉強に励んでおりました。
季節は秋、10月の末方で、涼しい晩でした。
風呂場で頭を洗っていると、浴室内に気配がありました。
(誰か、いるっ!)
と思い、とっさに顔を上げましたが、当然誰もいません。
変だなあ、と思いつつ、
そのまま湯船に浸かり、風呂場を出ようとしました。
 ドアが開かないのです。
先の、納得の行かない感じも手伝って、パニクりました。
と、見ると、ドアノブに付いている回転式の錠が回され、ロックされているではありませんか。
 私は入浴時にこのロックを掛けたことはありません。
その晩も、ロックした記憶はないのです。
(妙だなあ…)
私はこれを母にも姉にも言いましたが、一笑に付されるだけでした。

 ところが、その1週間後のことです。
実家のすぐ傍にはK寺というS宗の古刹があります。
そこの住職O師という方は、K大学の出身で国語教師をしておられ、
姉も私も中学時代にお世話になりました。
特に私とは相性がよかったのか、中学二年の時に定年を迎えられましたが、それまでいろいろとお世話になった方です。
お若い頃は強面の剣道部顧問としてブイブイ?鳴らしていたそうなのですが、私の目にはいつもとても優しく、ユーモアもある先生でした。

 その日、朝に家を出ると、K寺の前に看板が立っています。
見ると、O師の亡くなられたことを告知するものでした。
その暫く前から、入院なさっておいでだとは人づてにうかがっていたのですが、ショックでした。
 あれは、O師の別れ際の挨拶代りだったのでしょうか…?