鳴子温泉 某
Akihiro buta-natureさんの投稿
 (投稿原稿の内容を尊重しつつMoMoがリライトいたしました)


カミさんと2人で鳴子温泉の少しはずれの某宿に泊まった時の話です。
宿は、旅行の数日前にインターネットで検索して予約しました。

宿に到着して、まず目に飛び込んできたのが、
フロント(・・・と呼べる程立派ではなかったですが)の壁一面に

「結界?」

・・・と思えるほど、貼りまくっているお札。

また、
部屋まで行く途中、
誰もいる気配のない・・・と言うより、何年も使われてなさそうな部屋に
「○○様」と紙が貼られていたのも不気味でした。

部屋に荷物を置いたあと
HPに載っていた露天風呂に早速入ってみたのですが、
雑草が生い茂っており、鯉でもいそうな汚れた小さい露天風呂でした。

「これはダメだ」

・・・と浴場に戻ったのですが、
ここからが恐ろしい体験が始まりました。

身体を洗っていると、ドアの向こうから

「チャリ〜ン♪ チャリ〜ン♪」

・・・と
鍵を束ねた物がこすりあうような音が聞こえてくると、
ドアを通り抜けて、私の横通り過ぎて行ったんです。
もちろん、
そこには誰もいません。

思わず隣の女風呂にいたカミさんに大声で、

「おい! 部屋に戻ろう、何か変だ」

私たち2人は、
すぐに浴場を出ると部屋に向いました。
そして、
部屋に入ったその時、
和室の中でかすかに御香の仄かに甘い香りが漂ってきたんです。
(部屋には御香を焚いていません)

カミさんがポツリと、

「私、聞いたことがある。
 御香の香りがしているという事は歓迎してくれてるって・・・
 (もちろん幽霊が)」

そうは言っても、

「そう、それは良かったね」

・・・と
いう訳にもいかず、
私たち2人は、朝まで一睡も出来ませんでした。

翌朝、
早々にチェックアウトをして逃げるようにこの宿を離れ、
気分転換にと鳴子温泉駅に足湯に向かいました。
そこで、
お土産店に寄ったところ・・・

店員さん 「お客さん、宿はどこ?」
私    「S」
店員さん 「あぁ〜(沈黙)・・・他に宿が無かったんだね〜。可愛そうに」