「インターネット・カフェ」 
なびおさんの投稿
 (投稿原稿の内容を尊重しつつMoMoがリライトいたしました)


今から一年ほど前のことです。

その日、
私は終電に乗り遅れ、
始発までどこかで時間をつぶさなければならなくなりました。
で、
たまたま見つけた
インターネット・カフェで、時間をつぶすことにしたんです。

その店は、
古いビルの数フロアを占める、何の変哲も無いありふれた感じでした。
7階の禁煙フロアに入ると、

『深夜0時以後は、全体の照明は消灯するので、
 各ブースの照明スタンドをお使い下さい』・・・・との張り紙

既に、フロア照明が消え薄暗く、
高さ1m5〜60cmのパーテションで仕切られたブースは、
どこも真っ暗で、私の他には客がいないようでした。

「ほぉ〜、貸切かぁ。」

始発の時間までは仮眠することにした私は、
リクライニング・チェアを倒し、うとうとし始めました。

どのくらいの時間が経ったのでしょうか、
私は、少し離れたブースの人の気配に、ふと目を覚ましたんです。

「ああ、うとうとしている間に誰か入店したんだな」

・・・と、
私は特に気に留めることもなく、
再び眠りに入ろうとしたのですが、

「ぶつ、ぶつ、ぶつ・・・」

独り言のようなつぶやきが私の耳に入ってきました。
そのつぶやきは、例の少し離れたブースの方から聞こえてきました。

『勘弁してくれよ』、

無視して眠りに入ろうとしたのですが、
逆に余計に気になってしまい、目が冴えてきて
聞くとはなしに、その独り言を聞いていると、
なんと、
その独り言は、

『お経!』

私は何とも言えない薄気味悪さに、
転がるようにブースを飛び出すとフロントに急ぎました。

会計をする間、
何気なく横を見ると、モニターがあり、
そこには現在の店内の利用状況がうつし出されていました。
しかし、
7階の利用状況を示すモニターには、
私のいたブース以外には利用中を示す赤い印はありませんでした。

私は平静を装いながらも、震える声で、

「他のブースのお客さんの独り言がうるさくてさー」

「えっ?、7階はお客様以外は誰もいませんよ」

逃げるように店を出た私が、後から思い出したのは、
エレベーターに乗る時に目に入った光景でした。

私のいたブースから少し離れたブースに、
確かに明かりが灯っていました。
それは、
備え付けの照明スタンドの明かりではなく、
もっと薄暗く青白いもので、
上からではなく、下の方から照らすかたちになっていたのです。