「ラブホテル」
てんてん@大阪さんの投稿
 (投稿原稿の内容を尊重しつつMoMoがリライトいたしました)


もう10年以上前の事になります。
当時付き合っていた彼女とあてのない旅行をしていました。
車で行ける所まで行き、夜になったらラブホテルで宿泊する。
そんな旅行でした。

その日は土曜日で、どこも満室でした。
色々探しまわったのですが、どこも空いてません。
どのホテルでもお泊り客で一杯の様子。

「これは無理かも・・」

諦めかけた頃、
「普段使っていない、古ぅ〜いタイプの部屋で良ければ」
・・・という
ラブホテルが見つかったんです。
私達2人は、大喜びでその部屋に入ったんです。

「へぇー、本当に古いって感じの部屋ね。
 テレビだって、こんな古い感じの見たことないし、
 いったい何時頃の製品かしら??」
「あ・・・う、うん。」
「でも、部屋はきれいよね。 掃除が行き届いていますって感じ」
「そ、そうだね・・・」

実は
僕は部屋に入った瞬間、
何とも言えない様な違和感があったんですが、
彼女は何も感じていないようだったので、
いかにも昭和の匂いのする古いインテリアのせいだと思い、
特に気に留めなかったんです。

レトロな部屋の雰囲気にご満悦の彼女は
クローゼット(って箪笥?)の前でさっさと裸になると
先にお風呂に入って行きました。
その間、私はテレビを見ていました。
すると、

「わぁ〜い」

・・と、
はしゃぐ様な声。
僕は、
彼女がお風呂で、何か珍しいものでも見つけて、
はしゃいでるものと思ってました。

小一時間ほどして、
ゆっくり目のお風呂から上がってきた彼女に
僕は声を掛けたんです。

「何か珍しいものでもあったのか? 大きな声出してたけど・・」
「えっ? 何の事? 私、声なんか出してないよ。」
「あれ、気のせいかな??」

僕は何か気持ち悪いなと思いながらも、
彼女と交代でお風呂に入ったんです。
お風呂は、今では珍しいタイル張りのもので、
子供の頃に行った銭湯を思い出すような造りでした。

とは言っても
ゆっくりと湯につかる気にもなれず、
そそくさとお風呂を出て、洗面台の鏡を見ながら体を拭いていると
鏡の中をバスタオルを体に巻いた女性が横切ったんです。
僕はてっきり彼女だと思い、

「ちょっと待ってて。すぐ行くから」

・・・と、
声を掛けながら部屋の中を見ると
彼女はバスタオル姿などではなく、
ちゃんとパジャマに着替えてすでに熟睡していたのです。

その日は
それ以外何事も起こらなかったのですが、
僕はあまりの恐怖で朝まで一睡もする事ができませんでした。