「黒い服の男」
坂崎ゆきさんの投稿
 (文章の一部について、MoMoが加筆修正いたしました)


都内のある病院での体験談です。
当時、私はこの病院内にある喫茶店でバイトしてたんです。
まぁ、喫茶店といっても、
実態は喫茶スペースといった感じで、
店員は1人で十分という事もあって、
私は基本的にはいつも1人で勤務していました。


遅番で午後入りしたある日、
広い駐車場の真ん中辺りで、
周囲には一台の車も駐車していないのに
黒い服を着た男性がポツンと1人で立っているのを見かけたんです。

「葬儀社の人かな??」

・・・と、
それほど気にも留めていなかったんです。

ところが、
早番の女の子と交代して小一時間後
ふと外を見るとまだ黒い服の男性がまだ駐車場に立ってるんです。

「あれ、まだいる?
 そういえば、葬儀社の人は、上に何か羽織って喪服は隠すわね・・・
 じゃぁ、あの人、誰? 何してるの??」

そんな事を思ってると、
常連のお客さんが来られて

「ここに刺された政治家が運ばれたって言うんだけど本当?」
「えっ、そうなんですか? 私、遅番で来たから・・・」
「おぉ、ほら、テレビ、ちょうど今、その事言ってるぞ!」

お客さんに促されてテレビを見ると、
ヘリが病院上空から中継していて、
駐車場の辺りがアップになっていたのですが、
・・・・・・映っていないんです、黒い服の男性が。

私はとっさに窓の外を見たんですが、
その男性は確かに駐車場に立っているんです。
なのに
テレビカメラには映っていないんです。

「ど、どうして!?」

その時、リポーターが
「あっ、只今、新しい情報が入りました。
   つい先程、A議員の死亡が確認されました。」

もう一度、駐車場を見ると、黒服の男性は消えていました。

親しい看護士にこの事を話すと、

「死神かもしれないわね。
 大きい声じゃ言えないけど、そういう事って結構あるの」

その病院では時折「お迎え」が目撃されていて、
誰かが亡くなる前に院内や駐車場で「待っている」そうなんです。

私が見た、黒い服の男性は死神だったんでしょうか?
今となっては知るすべもありませんが・・・。