「不動産(2)」
じゅんさんの投稿
 (文章の一部について、MoMoが加筆修正いたしました)

私のすぐ左側には2階に上がる階段があり、
この階段を駆け上がれば、その気配の正体が明らかになる。
この家が黒っぽく見えた原因が判る。
そうは思ったい私は、
勇気を振り絞って2階への階段を上り始めたんです。

階段を上り始めると、
頭の中に
昭和40年代のような風景にほのぼのとした家族団らんのひと時が
浮かんできたんです。
以前の持ち主の念というか想いが私の中に
次から次と入っきたのでしょうか。

2階に上がると
目の前に和室の部屋が広がっていたのですが、
その部屋の真ん中におばあさんが正座をして私を見ているんです。

私が驚きと恐怖で立ち尽くしていると
彼女はこう語りかけてきたんです。

「家に誰も私の子供がいないのですが、どこに行ったのでしょうか?
 お墓にもきてくれないし・・・心配になってここまできたのですが。
 それに、あなた達はどちら様で・・・?」

「私も詳しいことは判らないですが、
 この家は、今は人手に渡っていて、
 息子さんはもう住んでらっしゃらないんですよ。
 私は不動産会社の者で、今日、この家を調査に来たんです。」

私がそう答えると
彼女は悲しそうな顔をしてスーッと消えていきました。

私は2階も一通り見て回ると1階に下り
2階での出来事を私は社長に伝えました。
社長は半信半疑でしたが、
私はこの家の前の所有者であった息子さんを捜し、
社長と一緒に彼に会い、2階での出来事を話したんです。

息子さんの話によると
家を手放してからは墓参りに入っていない事が判りました。
また、
私が見たおばあさんの容姿が
彼の母親そのものだったことも判ったんです。

社長は
息子さんと会った後、
すぐに、その家の売却を決めました。
そして、
後日、売却の仲介を請け負った私が、
家の写真を撮影しに行ったときのことです。

私が家の外観を撮影をしていると、
お隣の家からおばあさんが出てきて、

「Jさんですか?」

と、
いきなり、声を掛けてこられたんです。
私はびっくりして、

「そうですけど、どうして私の名を? 
  奥様とは初対面だと思うのですが。」

「いや、実は昨夜、夢枕に亡くなったこの家の奥さんが出てきて、
 『明日Jさんが来るので話しかけてほしい。
  そして、出来ることなら私の家を買ってほしい。』
 ・・・って、
 まさか本当にJさんが来るなんて、私もビックリしてるんです。」

詳しく聞くと
そのときに私の名前と姿形を教えられたので、すぐに判ったそうです。
また、
私が2階で会ったおばあさんとは幼馴染だったそうです。

家はそのお隣の奥さんが買われました。