「不動産(1)」
じゅんさんの投稿
 (文章の一部について、MoMoが加筆修正いたしました)


私は関西方面で不動産関係の仕事をしています。
仕事柄、中古の家などの調査をすることも多いのですが、
霊感が強いのか、調査の際、異様な感覚に襲われる事があるんです。
不動産業というのは、
皆さんが思っている以上に霊に関わる事が多いのかもしれません。

これは
奈良県の東吉野村というところに家の調査に行ったときの話です。
知人の会社社長より電話があり、

「東吉野で中古の家を買ってん。
 別荘にしようと思ってるんやけど、
 一度いろいろな意味で家をみてくれんか?」

・・・ということで、社長と一緒に家を見に行ったのです。

私がその家を見たときの第一印象は「黒」。
経験からなんですが、家が黒っぽく見えるときは、
その家に何かしらの悪い意味での霊的なモノが
潜んでいる事が多いんです。

「社長、この家は手放したほうが良いと思いますよ。
 少なくとも住む家ではないです。」

私は直感で、そのように社長に話をしました。
社長も
少なからず異質な感じがしていたようで、
(だから、私を連れてきたのですが)

「やっぱり、そんな感じか・・・でも、一応、中も見てもらえるか?」

私は、
そのまま家に入る事に大きな不安を感じたので、
近くの酒屋さんまで引き返して線香・お酒・塩を買って来て、
改めて、家の中に入る事にしたんです。

で、
家に入ろうとするとドアが開かないんです。
鍵は確かに外したのに全くドアが開かないんです。
まるでドアの向こうから誰かがドアを押さえているような感じなんです。

「おかしいな、この間は普通に開いたのに・・・」

仕方がないので、
社長は左奥にあった勝手口を壊して室内に入って行きました。
私もその後をついて行ったのですが、
勝手口から一歩家に入ると
右側から人の気配というか視線のようなものを感じたんです。
とっさに、その方向に目をやると神棚が祀ってあり、
家具類もそのまま残っていたんです。

社長に、この家を手に入れた経緯を聞くと
借金のカタに金融屋が取り上げた家を購入したとのこと。
前の持ち主が家財道具も全て置いたまま逃げて行ったらしいのです。

「なるほど、未練・・・悲しみ・・・そういった念が残ってるのかな」

そう思いながら、
家の中を見て回ったのですが、

「あれ? 間取り・・・変だぞ??
 この庭は坪庭?、中庭? 灯篭、井戸まで・・・」

そうなんです。
この家は家の真ん中に庭があって
その庭の周りにカタカナのロのように部屋が取り巻いているんです。

一般的にこの様な間取りは家相が悪いということで嫌われているので
新しいセンスで作られた西洋風の家ならともかく、
築何十年という古い日本家屋では非常に珍しいんです。
それに井戸まであるなんて・・・

私が呆然としていると
2階から人の気配、物音がしたんです。
社長も隣の部屋にいるので
2階から人の気配や物音がするわけはありません。
でも、
明らかに誰かがいる、歩いている・・・といった感じなのです。
社長もその気配を感じたのか、しきりに天井を見ています。

私のすぐ左側には2階に上がる階段があり、
この階段を駆け上がれば、その気配の正体が明らかになる。
この家が黒っぽく見えた原因が判る。
そうは思ったい私は、
勇気を振り絞って2階への階段を上り始めたんです。