「指輪」
九州のニャンコさん@同業者の投稿
 (文章の一部について、MoMoが加筆修正いたしました)


怖いというより、とっても不思議な話です。

私の父が亡くなった時
母は父の結婚指輪をそのままにして、父を荼毘(だび)に付しました。

母は最初、
父がいつも身につけていた思い出の品ですし、
形見にもなるので亡骸から外そうと思ったそうなんですが、
考え直してそのままにしておいたそうです。
なぜ指輪を外すのを止めたのかについては、
母も故人になりましたので理由は私には解りません。

さて、
父が亡くなって1年余りの間は
父と母そして私 親子3人で過ごしたその家で生活をしていたのですが
色々な事情があり、母と二人引っ越しをすることになったんです。
同じ市内ではありますが、
まるっきり別の町で、車でも一時間半位の距離です。

初めは戸惑ったものの、そのうち新しい土地にも慣れ、
父の三回忌も無事に終わったころのことです。

庭で草むしりをしていた母が、
大喜びで家の中に飛び込んできたんです。

「見て、これ!」

母の手には見覚えのある指輪
そうなんです。
父と一緒に荼毘に付したはずの指輪なんです。

話を聞くと
根の深い雑草を採ろうと、小さなスコップで地面を掘ったところ
土の中から、この指輪が出てきたというのです。

「そんな、バカな・・・」


私は不思議に、いえ気味悪く思ったのですが、
母は、とても嬉しそうで、その後も指輪を大切に持っていました。

しばらくして、母も亡くなり
私は父の指輪の事などをスッカリ忘れていたのですが、
ひょんな事からその指輪を見つけたのです。

「あっ、これ・・・」

私は、何だかその指輪が、スゴク懐かしく愛しく思えて、
キーホルダーに車と家の鍵と一緒につけて持ち歩く事にしたんです。

その数日後、
私は交通事故に巻き込まれてしまったんです。
私の車は国産の大型車でしたが見事に大破、グシャグシャでした。
地元のニュースで取りあげられるくらいの大きな事故だったんです。
にもかかわらず、
私はかすり傷ひとつなかったんです。(奇跡的?)
一方、
相手の方は命に別状はなかったものの
両足と骨盤骨折で半年の入院でした。

事故の現場は、
なぜ自分が無傷なのか信じられないような光景でした。
すぐに
警察と救急車を呼んだのですが、
ふと気付くと、
キーホルダーに付けていた父の指輪がなくなっていたんです。
車のキーは車に刺さったままで、家の鍵はちゃんとぶら下がっていて、
キーホルダーーには壊れたり、外れたりした形跡はないんです。

もし衝突の衝撃で外れたのなら・・・と、
落ちてそうな辺りを探しましたが見つからなかったんです。

指輪が庭の土の中から出てきたのも奇妙な話ですが、
忽然と消えてしまったのも不思議です。
事故から十年以上たった今でも あの指輪は出てきません。
きっとあの指輪が私の身代わりになってくれたのではないでしょうか。

両親を亡くし一人で生活している現在でも
両親に守られているのだと実感しています。