「石碑」
本厄当たり年さんの投稿
 (文章の一部について、MoMoが加筆修正いたしました)


子供の頃、父から聞いた話です。

兵庫県の武庫川の河川敷工事の際、
二階建ての現場事務所が建てられたんですが、
実はその場所は
元々何かの鎮魂の為の石碑が建っていたものを、
工事の人が移動させて、その跡地に建てたそうなんです。

その建物(飯場)は
常に14〜5人の作業員が寝泊りする事になっていたのですが、
最初の夜から、毎晩のように怪現象が起こったそうです

その怪現象というのは、
寝ている間には誰も気がつかないのですが、
朝起きると、一階と二階で寝ていた人が上下逆になっているのです。
つまり、
一階で寝ていたはずの人が二階で目覚め、
二階で寝ていたはずの人が一階で目覚めるといった具合です。

初めのうちは気のせいかな?・・・と思っていたらしいですが、
(みんなお酒をたらふく飲んで寝ますからね)
数日過ぎると
さすがに皆気味悪がって泊りたくないと言い出し、
その建物(飯場)は作業道具入れとして使用し、
他の宿泊施設に寝泊りしたそうです。

やがて工事は難なく終了し、
建物(飯場)もきれいに片付けられ、
移動させられていた鎮魂の石碑も元通りの場所に戻されたんです。
私も小学生ながら
石碑が戻ってきたのをおぼろげに覚えています。

その後、何年か程過ぎた頃、丁度バブルの全盛期に、
石碑の建っている土地が宅地として開発されることになったんです。
石碑は近くの公園内に移動させられました。

そして、
その土地には建売住宅が6棟並びました。
ほどなく、
6棟とも売れてしまったのですが、
西から二軒目の家の住人は早々と引っ越してしまい、
売り出し中の看板が立ちました。
それからも
何人かの人達が入れ替わり立ち代り入居と転居を繰り返し、
ついには
その西から二軒目だけは取り壊されてしまいました。

そして、
その場所にはまた石碑が鎮座する事になったんです。

当時は結構有名な話で、週刊誌にも載ったと記憶してます。
その記事によると
夜になると、まず女性の幽霊が家の中を歩き回り、
夜中を過ぎると、馬の蹄鉄の音が聞こえ、
甲冑武者達の行進でもするかの様に歩き回るのだそうです。

私も自転車で見に行きましたが、
同じスタイルの建売住宅が並んでいる中、
一軒だけ取り壊されて、石碑が建ってといるのは異様な光景でした。