「お迎え」
matsuさんの投稿
 (投稿原稿の内容を尊重しつつMoMoがリライトいたしました)


会社の同僚のFさんが体験した話です。

Fさんが高校生の時のこと、
子供の時からの親友Kさんとツーリングに行くのに
親友がFさんの自宅に迎えに来る事になっていたんです。
しかし
約束の時間になっても、Kさんはなかなか現れません。
携帯電話がまだ存在していない時代なので連絡もとれません。
ついにはFさんも

( 都合が悪くなったのかな? 
 それならそれで連絡くらい出来るだろうに・・・・)

と、
約束を諦め、ベッドに入ったんです。

深夜一時頃
Fさんは聞きなれたバイクの音に目を覚ましたんです。

(おいおい、いくら何でも、真夜中に迎えに来るなよなぁ〜)

Fさんがブツブツ言いながら2階の窓から顔を出すと

バイクにまたがったKさんが、いつもの調子で

『ゴメン! 遅れた! 今から行こうぜ!』

「今からって、お前、今何時だと思ってんだ?」

丁度その時、
自宅の電話が鳴りだしたんです。

「ごめん、電話。ちょっと待ってくれる?』

『電話なんてホっとけよ! 早く行こうぜ!』

「悪い。 家族が起こしちゃ悪いから、俺が出るよ。」

そう言って、彼が電話に出ると
FさんとKさんの共通の友達からでした。
彼は震える声で、

「Kのお母さんから電話あってな、
  さっき、Kが病院で息を引き取ったって・・・」

「何を言ってんの?! Kなら今、俺の家の前にいるぞ!」

そう言いながら窓から外を見ると誰も居なかったそうです。
なんでも、
KさんはFさんの家にバイクで向かってる途中、
カーブを曲がりきれずにカードレールに正面衝突し、
搬送された病院で意識が戻らないまま亡くなったというのです。


Kさんの通夜の晩
この出来事をKさんのご家族や友人達に話したのですが、
その時、突然、停電になり
地の底から響く様に、Kさんの笑い声が葬儀会場に響き渡ったんです。
明かりはすぐに点いたのですが、
その場にいたKさんの親族や友人達の顔は一気に青ざめたそうです。