「離島の駐在所」
警官さんの投稿
 (投稿原稿の内容を尊重しつつMoMoがリライトいたしました)


私がある離島の駐在所にいた頃の話です。

一般に離島勤務というと、
元々その島に関係のある者か、何か不始末をして飛ばされたか、
そうでなければ、よっぽどの物好き・・・といった感じです。

私は、その物好きの類で
離島のノホホンとした生活に憧れて自ら異動希望を出したんです。
普通なら異動届なんてものは出したとしても、
必ず異動出来るとは限らないし、
異動できるとしても、そこそこ時間がかかるものです
しかし私の場合は、
「そんな辺境に行きたいという者はいない」
・・・という事で、
すぐに異動が決まり着任する事となったんです。

異動の前日、
同期の仲間達との壮行会でのこと、

「お前の行く島な、何十年か前ひき逃げがあったらしいで。
 噂じゃ、その被害者の幽霊が出るんやて。 気ぃつけろよ〜。」

と仲間の一人に言われたんです。
私は幽霊なんて全く信じてなかったし、
新天地での仕事と生活のことで頭が一杯になっていたので
大して気にもしていなかったんです。

翌日、
着任した島には、当然、警察署などなく駐在所があるのみです。
事件など起こるはずもなく、
私が夢描いていたノホホンとした時間だけが流れていく毎日です。
島民の方たちは、私を優しく受け入れてくれ、
私も島の様々な行事に参加しました。
そんな事もあってか、
一年も経たないうちに私は島民の人気者になりました。

そして3年の月日が流れ・・・

私が島をパトロールしてると島民のおひとりが

「ご苦労さん。
 3年もここにおった駐在さんは、あれ以来、あんた位や。
 ありがたいこっちゃ。」

「あれって、何ですか?」

「知らんのか、あんた? 
 20年位前かな、駐在さんがひき逃げにあって死なしたと。
 そいから、駐在所にその駐在さんのお化けが出るって噂で・・・・。
 新しい駐在さん来ても、皆、すぐに帰るんや。 
 でも、あんたはエライなー」

「・・・・」


それから数週間後・・・、
いつものように報告書をまとめてると、
駐在所の外で

ドン!

・・・と大きな音。

「こんな夜遅くに何の音だ?」

私が駐在所のドアを開けると、
道の真ん中に男性がひとり血を流して倒れています。

「どうされましたか?」

私が近づこうとすると
その男性はヨロヨロっと起き上がったんです。

(け、警官? でも制服が・・・)

そう思っていると、
その若い警官は血だらけの手で銃を抜くと

「と・・・止まりなさい・・・さもないと・・・」

バァーン!

私の記憶はそこまでで、
私が目を覚ましたのは島の診療所のベッドの上でした。
聞くと、
駐在所の前に倒れていた私を
島民の方々が診療所に運び込んでくれたとの事。
診察の結果、体に異常はみたりませんでした。

その後、
私は異動希望を出し長崎県S市の派出所勤務となりました。