帰って来た父親
ジョーク・マンさんの投稿
 (文章の一部について、MoMoが加筆修正いたしました)


肉親や親しい友人・知人などが死ぬ前に(あるいは死んだ直後に)、
霊になって、遠く離れいる人のところにお別れを言う為に会いに来る
・・・っていう現象はよく耳にしますよね。

この話は、小学校時代の友人Wの体験談です。

俺が小学校4年生の夏、
地元の化学工場で大規模な爆発事故が起きて、
3人の死者と多数の重軽傷者を出たんです。

1学期の終業式の日だったのか
土曜日だったかハッキリ覚えてないんですけど、
とにかく授業が午前中で終わり、帰宅して昼食を食べ終えた頃、
午後の1時半か2時頃に起きた事故でした。

その日、
昼食を食べ終えたWは、
居間で母親と妹と一緒にテレビを見ていたそうです。
すると、
玄関の戸がガラガラっと開く音がして、
 (彼の家の玄関は、昔風の横にガラガラっと開けるガラス戸でした)

「ただいまー、W、A子」

・・・と彼と妹の名を呼ぶ父の声がハッキリと聞こえたそうです。

「あっ! お父さんだ!』

優しい父親が大好きだったWと妹は、
父親がいつもより早く帰って来たと思い、大喜びで玄関に走って行ったそうです。
ところが、
玄関には父親の姿どころか人が入って来た気配すらありません。
確かに・・・ハッキリと父親の声を聞いた3人は、

「不思議だね?」
「おかしいね?」

・・と顔を見合わせたそうですす。

その直後、
工場から家に電話があり、
父親が事故で亡くなったことを知らされたそうです。
爆発現場のすぐ近くにいた父親は即死だったそうです。

彼の母親は、
父親が死に際して、最愛の子供たちに会いに来たということを悟り、
子供達を抱きかかえ号泣したそうです。

幼い子供達や奥さんを残して死んでいくのは、さぞ無念だったでしょう。
彼の父親の心情が思いやられます。

この話は、
俺の小学校ではすぐに広まり、
誰もが知っている有名な心霊話になってしまいました。
でも、
この話を聞いても怖いとかいう感情は起きず、
むしろ可哀想という感情が子供心にも湧いたのを覚えています。