「声の主」
ゆうさんの投稿
 (文章の一部について、MoMoが加筆修正いたしました)


これは僕の先輩の体験です。

先輩は上越新幹線の熊谷のR大学に通っていました。
熊谷は源平時代には熊谷直実という御家人が統治していた土地です。
直実は源氏側として戦ったのですが、
平家が壇ノ浦で滅亡した後に源頼朝から離反し、
それが原因で頼朝によって滅ぼされた武将です。

R大学の敷地は、
この時の戦の跡地・・・古戦場で、
大学建築の際には数多くの人骨が出たと伝えられています。
そういう事もあってか
R大学では、
夜な夜な甲冑を着た武者が近くの池から出るとか、
教室のベランダを十二単を着た女性が歩いている・・・等々
様々なそれらしい噂が絶えません。

先輩は大学で詩のサークルに入っていて、
合宿で学校にサークルの仲間達と一緒に泊まったらしいんです。
夜中・・・、
喉が乾いた先輩はジュースを買いに行ったそうです。
学内の自販機でジュースを買おうとした時、

『開けてくれ〜!』

・・・という声が聞こえてきます。

どうやらその声は自販機横にある部屋の中から聞こえてくるようです。
でも、
その部屋は倉庫になっていて普段あまり使われる事もないし、
ましてや、こんな夜中に人が入っているはずもありません。

しかし、
中からの声はだんだん大きく、そして荒くなり

『開けろぉー! 開けろよぉー!』

・・・と
ドアを内側からドンドン叩き始めたんです。

先輩は余りの事に言葉も出なければ身体も動きません。
部屋の中からの声とドアを叩く音は
ますます大きく荒々しくなっていきました。
その余りの騒がしさに
学内にいた学生達ががわらわらと集まってきたそうです。

「誰かが閉じ込められてるんじゃないか?」

・・・と、
集まってきた学生達の中の一人が、
用務員(警備の人?)を呼びに行って鍵を開けてもらったんですが、
中には誰もいなかったそうです。

鍵を開けている最中にも
中から声とドアを叩く音が響き渡っていたのに・・・・・。

ちなみに
この部屋は換気扇があるだけで窓もなく、
ドア以外からは一切出入りする事は出来ないそうです。

それじゃ〜あの声の主はいったい・・・。