「見つめる目」
minamiさんの投稿
 (投稿原稿の内容を尊重しつつMoMoがリライトいたしました)


1週間ほど前、
私の通っている高校で映画上映会があったんです。
その前日のこと、
視聴覚委員の私は他のクラスの視聴覚委員5人と応援の男子達と
会場準備の為、倉庫に折りたたみ椅子を取りに行ったんです。

倉庫の荷台に積まれている椅子を降ろし
両手に2脚づつ抱え持っては会場まで運んでいきます。
男子達は力があるので3〜5脚づつ抱えて一気に運んでいきますが、
私達女子には結構な重労働です。

3度、4度と会場と倉庫の間を往復した頃には、
私の息は完全に上がっていました。

「ふぅ〜 疲れるぅ〜、こんなの女の子のやる事じゃないわよ」

そう呟きながら
倉庫の荷台から椅子を降ろしていると
胸ポケットに入れていた携帯電話がポトンと床に落ちちゃったんです。

「あっ!」

携帯電話はそのまま転がっていって、
荷台の下に入っていったんです。

「うそぉ〜!」

私はスグにしゃがみこんで荷台の下を覗き込みましたが、
結構奥の方まで転がっていったのか見つかりません。

「まいったなぁ〜」

仕方ないので、
何か長い棒で、携帯電話を探り出す事にしたんです。
倉庫内を見渡すと、柄の長いほうきが見つかりました。

「いいじゃぁ〜ん」

私は早速、そのほうきを手にして荷台の前にしゃがみ込みました。
そして、
ほうきを荷台の下に入れようとした瞬間、見てしまったんです!

荷台の下の暗闇から
私をじっと見つめる2つの目を・・・・

荷台の下は狭く、人が入れるような幅(高さ?)は全く無く、
また、
荷台の向こう側はすぐ壁なので人が隠れる事は不可能です。
なのに、
荷台の下の暗闇に
ハッキリと2つの目が浮かび上がっているんです。

私は、
暗闇に光る2つの目に見据えられ、身動きが取れなくなりました。
まるで金縛りにでもかかったように、身体が動かず声も出ません。

「minamiちゃん、どうしたん?」

硬直状態の私を助けてくれたのは他クラスの視聴覚委員の声でした。
次の瞬間、
暗闇から私を見つめていた2つの目は消えてなくなりました。
私は、
本当のことを言って気味悪がられるのも嫌だったので、

「携帯電話、荷台の下に落として、探してたとこ・・・」

・・・と
笑いながら応えたんです。
すると、彼女も私の横にしゃがみ込んで・・・

「目の前にあるじゃない」

・・・と、
手を伸ばし、30cm位奥から携帯電話を取り出したんです。

「あ、ありがと。気が付かなかった」

でも・・・、
さっきまでは
携帯電話はそんな所には無かったんです。
彼女がしゃがみ込んだ瞬間、
その場所にフゥ・・・と現れたんです。

ほんの数分の間の出来事ですが、
一体、何が起こっていたんでしょうか?
あの2つの光る目は一体何だったのでしょうか?
ちなみに
倉庫で人が死んだとかそういう話を聞いたことがありません。