「夜行バス」
ゴーストさんの投稿
 (文章の一部について、MoMoが加筆修正いたしました)


それは5年ほど前の出来事でした。
当時、私は単身赴任で大阪に転勤してまして
時々、東京の八王子まで夜行バスで帰ってきてました。
夜行バスってのは
結構、若い女性に人気があって乗客の6割位は若い女性でした。

その日、
夜行バスは夜11時過ぎに大阪難波から八王子に向かい出発します。
その日のバスはリクライニングタイプで3列シートの豪華なものでした。
(時々、普通の観光バスタイプのものがあるんです)
私は前列から2番目の左窓側の席でした。
その日は満席でないらしく、
私の横と右窓側には定刻までに乗客は乗ってきていませんでした。

そして、定刻通りバスは出発。
バスは難波を出発するとすぐに車内が薄暗くなるよう減灯されました。
私はリクライニングシートを倒して毛布をかぶって横になりました。

しばらく上を向いていましたが、
ちょっと横を向いたとき、右窓側の席に人影が動いたんです。
よく見ると長い髪の女性のようです。
私と同じように
シートを倒し毛布をかぶって横になろうとしているところでした。

「あ〜、やっぱり乗客がいたんだ」

・・・等と思いながら、
私はそのまま爆睡モードに入りました。

翌朝5時半頃でしょうか、
「まもなく到着」との車内放送で私は目を覚ましました。
リクライニングを戻しながら何気なく右窓側の席に目をやると、
昨夜の髪の長い女性がいません。

「あれ? トイレにでも行ってるのかな?」

しかし、
いつまで経っても女性は帰ってこないんです。
別の乗客がトイレに入ったのでトイレでない事は確かだし、
他の席を見渡しても髪の長い女性は一人もいません。
それにバスは、
大阪ー八王子の直行便ですので途中下車なんて考えられません。
なのに、
女性がいなくなってたんです。

程なくしてバスは八王子に到着。
私はバスから下車する時、右窓側の席を確認してみました。
すると、
その席においてある毛布が、
シワひとつ無く綺麗に四つ折りにたたまれたままだったんです。
でも、
私は確かに髪の長い女性が毛布を広げて掛けるのを見たんです。

バスを降りるとき、運転手さんに乗客のことを聞こうと思いましたが、
何と尋ねればいいものか判らず、何も言わず帰ってきてしまいました。
でも、
今でもあの時の
髪の長い女性が毛布をかぶる光景が脳裏から離れません。
私は一体何を見たのでしょうか?