「プール」
仏壇返しさんの投稿
 (文章の一部について、MoMoが加筆修正いたしました)


伊豆半島に7つの滝があります。
その一番大きな滝のすぐそばにある旅館に泊まった時の事です。
ここは広大な敷地(十五万坪)を持っており、
十五種類の露天風呂が崖の旅館から河原までに点在しています。

夏の暑い日でした。
夜になって、また汗が出てきたのでプールに行くことにしたんです。
ここのプールは部屋から崖の道を下った一番下の河原にあります。
タオル片手道を下っていくと
プールの場所だけ街灯がついていました。
周りは真っ暗、
すぐ裏の河原からは滝の音が聞こえてきます。
辺りには人影ひとつ無くひっそりとしていました。

僕は誰もいないプールで気持ちよく泳いでいたのですが、
しばらくすると、急にプールの水が冷たくなってきたんです。
大量の氷でも入れたように急激に温度が下がってきます。
このままプールの中にいたら凍えてしまう・・・
そう思い、
プールサイドに向かい移動し始めたんですが、
何気なく水面を見ているうちに妙な事に気づいたんです。
人影がいくつも漂っているような感じがするんです。

「やばい・・幽霊・・?」

プールサイドに目をやると
無数の人の形をしたモヤがプールの照明の周りを回っていて
ソレが水面に映っているんです。

「ぎゃーー」

僕は一目散にプールを飛び出し
崖の道を旅館に向かって駆け登っていきました。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

20m程登ったその時、
僕は、足首を何かに捕まれて転んだんです。

「えっ!」

見ると
か細い女性の手が僕の足首を握っています。
恐る恐るその手の先に目をやると・・

崖下のプールの水面に着物を着た若い女性が浮いていて、
彼女の手がニョキー−−と20mほど伸びて
僕の足首をつかんでいたのです。

あれから
どうやって部屋に帰ったか覚えていません
あの崖下のプールってまだあるのでしょうか?
大きな滝のすぐそばの河原の小さなプールでした。