「夢」
福井県
なまけものさんの投稿
 (投稿原稿の内容を尊重しつつMoMoがリライトいたしました)

10数年前に体験した不思議な体験を聞いて下さい。

戦時中、母の疎開先だった銚子に
全盲の祖母も連れ、家族5人でドライブ旅行に行った時の事です。

幾つもの山を越えた末、着いたホテルは何とも薄暗い印象で、
私はその不快感からか酷い吐気に襲われました。
その時、
目が見えないはずの祖母が、突然、ホテルの玄関を指差し、
「大きな鼠がいる!」・・・と叫びだしたんです。

両親と姉は、
長い時間車に乗っていたので疲れただけと、言いましたが、
ホテルに入るやいなや
今度は、姉が急な腹痛でその場に座り込んでしまったんです。
しばらくすると、
姉の腹痛は和らいだのですが、何とも嫌な感じでした。

部屋に通されると、
祖母は体調不良を訴えてそのまま横になり、
父と姉と私は、気分転換に海に散歩に出る事にしました。
ホテルから離れると、
私も姉も非常に体調が良くなり、
先程の吐気も腹痛も「疲れと車酔い」のせいだと話をしたんです。
しかし、
ホテルに戻ると私は吐気をもよおし、姉は急に下痢に・・・・

原因は解らないけど、とにかく、このホテルは良くないようだから
早く寝て、早朝にはチェックアウトしようと言う事になりました。

そして、
床に就いた私は、その晩、奇妙な夢を見たのです…

私が漁師さんの家に居て、
おばさんが
「これを男どもに届けてくれるかい」・・・とお茶を渡すのです。

私はお盆に5人分のお茶を載せ納屋に行きました。
そこでは、
漁を終えた男の人達が網を修理したり、道具を手入れしています。
私が行くと手を休め、酒盛りが始まりました。

お茶を受取った若い男の人が、代わりに細くい糸を渡すのです。
両手の親指と人差し指でつまむ様に私に持たせて、微笑むのです。

「これを持ったら何が起ころうとも絶対に動いてはいけないよ」・・・と。

次の瞬間、
私の身体は硬直し、目の前の若い男の人が消えたのです。
そして、
酒に酔った男達が喧嘩を始めて・・・・・。
口論が殴り合いになり、果てには道具を持ち出し血が飛び交います。
それは・・・まさに殺合い・・・

「あ・・・・あ・・・・」

言葉も出ず、立ち尽くす私・・・・

その時、
父の怒声と祖母の悲鳴で目が覚めました。
信じられない事に
私は母に殴り掛かっていたのです。
父に引っ叩かれて我に返ったのですが、
何がどうなったのか、何故母に殴りかかったのか・・・全く解りません。

私達家族は、
深夜にもかかわらず、強引にチェックアウトを行うと
逃げるようにホテルを後にしました。

祖母の親戚の家に転がり込み事の顛末を話すと、
そのホテルは、廃病院の跡地に建てたとの事でした。

そのホテルは今でも営業してるようです。