「失血」
吉野桜さんの投稿
 (投稿原稿の内容を尊重しつつMoMoがリライトいたしました)

学生時代、数年間、
私も旅行添乗員のアルバイトをしていました。

「呪われた旅 第35話 不倫の果てに」で、
紹介されていたK川のKホテルは有名ですよね。
私のアルバイト先でも体験者がいました。

さて、
私の体験ですが、
場所は愛知県の西浦温泉の某ホテルでした。
このホテルの乗務員部屋は旧館にあって、
私は、3つある乗務員部屋のうち一番左の部屋に泊まったのです。

深夜・・・
急に寒気が襲われて目を覚ましたのです。

「うぅ〜ん・・・何? この寒さ?」

その寒さというのが不思議な寒さで
部屋の気温が低くて寒いというより、
身体から熱が奪われていくような妙な寒さなんです。
血の気がみるみる引いていって、
体温が失われていくような感覚なんです。
そして、
それと同時に意識がドンドン薄くなっていって、
そのままを気を失ってしまったんです。

翌朝、
目覚ましで目を覚ましたのですが、
特に身体に異常は感じませんでした。

その日のお昼・・・、
乗務員部屋でガイドさん達とランチをとっている時、
昨夜の出来事をガイドさんに話してみたんです。
すると・・・

「ごめん、やっぱり言えばよかった」

ガイドさんの話によると
数年前に、
その部屋で女性添乗員が手首を切って自殺しているそうです。

私が感じた身体から熱を奪われる様な感覚は、
失血死していく彼女の感覚そのものだったのかもしれません。