「遺品」
ガントさんの投稿
 (投稿原稿の内容を尊重しつつMoMoがリライトいたしました)

兵庫県 淡路島 最南端 南淡町に
「若人の広場」という施設があります。
ここは、
第二時世界大戦中に学徒出陣の地でもあり、
志半ばで戦場に倒れた若者達の英霊を慰め、その記憶を残す為に
「平和のともし火」と遺品などの展示を行っていました。
(阪神・淡路大震災以降は閉鎖されています)

しかし、
この施設は色々と妙な噂が絶えないところで、
「夜中に大勢の人が歩いているような音が聞こえる」
「街灯の下に男の人が立っている」
・・・などが有名でした。

今回の話も、そういった話の一つです。

まだ、
若人の広場で展示品を見ることが出来た頃の事。
宿直の警備員が、
いつものように見回りをしていました。

そして、
ある展示ケースの前を通った時、底知れぬ寒気を感じたそうです。
展示室内は、
展示品の保存のため温度・湿度を一定に保っているので、
急に寒気を感じるという事など普通ならありえません。

恐る恐る展示ケースにライトを向けると
ガラスケースに手形がくっきりと浮かび上がっているのです。
しかも、
その手形は、ガラスケースの内側から浮かび上がっているのです。

彼は悲鳴をあげ警備室に逃げ帰ったそうです。

翌日、
再び、その展示ケースの前に立つと、手形など全くありませんでした。
展示品の持ち主は、
南方の戦いでなくなった青年将校の軍服で
母親が大切に持っていたそうですが、彼女が亡くなったあと、
どういう経緯かは不明ですが、ここに展示される事となった物でした。

この服の持ち主はこんな冷たいケースではなく、
自分の家に帰りたかったのではないでしょうか・・・