「隣の病棟」
渚透の投稿
私が小学生高学年のころの話です。

その年の夏は特に暑く 私は学校の近くの妹の入院していた病院に転がり込むことがよくありました。

そんなある日のこと、 あの出来事が起こったのです。

その日は妹について私も病院に泊まることになり、少しワクワクしていました。
友達の家にお泊りするような感覚でいたんです。

そして、夜9時。 看護婦さんが消灯にきました。
妹が眠れないと言うと、こんな話をしてくれました。

「ほら、窓のすぐ向こうにもう一つ病棟があるでしょ。あそこはもう使われてなくて今は物置みたいになってるんだけど・・・・、 出るんだって・・・ 小児病棟だし。男の子のユ−レイ。」

子供の私たちは、 待ってましたという気分になりました。

そして、夜中の1時、 私と妹は静かに病室をぬけだし、非常口のライトだけが明るい廊下を歩き噂の病棟の入口まできました。
病院全体がコの字形に造られていて、私たちのいる病棟とつながっていたのです。 ドアにはカギがかかっていませんでした。
私たちはおそるおそる中へ進んでいきます。

それぞれの病室にはベットや机などが乱雑につまれていて、 あまり人が来るところではないことがよくわかります。
少し歩き、広場のような場所に出ました。

子供ようの机や椅子がいくつか並べられていて、後ろの本棚には絵本などがぐちゃぐちゃに置かれています。

後からついてきた妹が、その本棚の前を通りかかった時でした。
何冊もの絵本が、ドサドサと大きな音をたてていっきにこちらに落ちてきたのです。
妹は何か叫びながら、来た道を走って戻っていきます。
私も急いでひきかえしました。
ここにいてはいけないと思ったのです。

流れていないはずの水道の音も聞こえます。
わけもわからず走りつづけ、もとの病室まで戻ってきました。

二人とも、息を切らしています。
そして、私は窓ごしにたった今までいた病棟を眺めました。
すると・・・・、 私には見えたのです。
窓に手をあて、 向こうの病室からこちらをじっとにらむ男の子の姿が・・・。