「私も連れて行って」
山梨県青木ヶ原


4年程前の夏、
神戸の某企業の慰安旅行の添乗で富士五湖に行った時の話です。

ランチの後、
「富士の風穴」を訪ねると、
近くの駐車場が何やらスンゴク騒がしいんです。

「へっ、何?」

様子を見てると、
ビニールシートに包まれたものが次から次へと運ばれていきます。
そう、
あの噂の青木ヶ原の自殺者の捜索をしていたんです。
(富士の風穴って青木ヶ原にあるんですよ)

慰安旅行で自殺者捜索ってのはマズイかなって思い、

「皆さぁ〜ん、
 何か、今日は取込中のようですので別の場所を観光しますねぇ。
 すぐに手配を致しますので・・・・」

・・・と話すと、

「かまへん、かまへん、こんなん滅多に見られへんねんから!」

・・・で結局、
作業の見学をする事になったんです。

私達がゾロゾロとバスから降りると
消防(?) or 警察(?)の方が

「旅行社の方ですか? 
 今日はこういう事ですから観光のほうは、ちょっと・・・」

「あっ、すみません、
 お客様が少し作業の様子を見たいと申しましたので・・・
 やっぱりダメですか?」

「うぅ〜ん、ちょっとねぇ〜・・・・・」

そうこう話をしていると、
私とお客様方の目の前を
青いシートに包まれた担架が一つ横切ったんです。
そして、

「連れて・・・、連れていって・・・、私も連れて行って」

・・・と、
女性の声が聞こえたんです。

作業を見たいと言っていたお客様も
「その声」を聞くなり見学どころではなくなり、
すぐにバスに乗り込みホテルに向かう事になったんです。

5分ほど走った頃でしょうか、
バスの後部座席の方から悲鳴が上がったんです。

「キャァー! たすけてぇー!!」

見ると、
白っぽい半透明の女性が、
首を吊った状態のまま後部通路に浮いてるんです。

「連れていって・・・、私も連れて行って」

「キャァーーー!!」

バスの中はパニック状態。
その後
その女性の霊は滑るように通路を前方に移動し、
フロントガラスに吸い込まれる様に消えていきました。