「溺れている」
近畿地方 某海水浴場


数年前
近畿地方の某有名海水浴場のライフセーバーの方に伺った話です。

夜10時頃・・・
彼が仲間と2人1組で夜間の巡回をしていた時、

「助けてぇー! 子供が・・子供が溺れてるんです!」

・・・という女性の叫び声が聞こえたんです。

声のするほうに走っていくと、
母親らしき女性が服を着たまま暗い海に入っていくところでした。
彼女の先を見ると
海岸から20m程の沖で男の子とおぼしき子供が溺れているのです。

「僕達に任せてください。」
「あぁ〜・・・お願いします。」

聞いたことがあるんですけど
溺れている人間を助けるっていうのは非常に難しくて、
溺れているのが小さな子供であっても、
ちゃんとした救助方法を知らないと一緒に溺れてしまうそうです。

・・ということで、
彼ら2人がTシャツを脱ぎながら、海にバチャバチャ・・っと駆け込んだ
その時、

「お〜い、お前ら、巡回サボって、何してんねん!!」

・・・と、
後ろの堤防の上から巡回中の先輩セーバーが声を掛けてきたんです。

「子供が・・・子供が溺れてるんです!!」

「子供??・・・そんなん何処にもおらへんぞぉ?!」

「えっ・・・そんな?」

彼らが海に目線を戻すと、
溺れていた子供がいなければ、波一つ立っていません。
さらに、
波打ち際に立っていたはずの母親まで消えていたのです。

「そ、それじゃ・・・今のは・・・」

そこに、
先輩セーバーがやって来て、

「お前ら、見ちゃったんだよ・・」

「見たって・・・あれ・・・幽霊・・・?」

先輩セーバーの話によると、
数年前、
溺れかけている我が子を救おうと、
洋服のまま海に飛び込んだ母親が溺れて亡くなったそうです。
子供は別の人に助けられて無事だったのですが、
母親の魂は、
今も我が子を助けようと彷徨っているというのです。