「聞きたくなかった」
長崎県 
ホテルR

ツアーや団体旅行に行くと
国道沿いのレストラン等でランチをとることって結構ありますよね。
お客様方は、
用意されたテーブルや座敷で豪華な食事をされるのですが、
私達乗務員は
乗務員室(控室)で乗務員食を頂きます。(添乗日記 2001/11/21)

その日も
いつもの様に乗務員室で食事を取ることになったのですが、
旅行シーズンということもあって乗務員室も満員に近い状態で、
広島の旅行社の女性添乗員と相席になったんです。

「こちら、ご一緒させて頂いてよろしいですか?」
「えぇ、どうぞ」
「人・・・一杯ですね」
「シーズンですもんね・・・どちらから来られたんですか?」
「大阪から・・・今日はH泊まりなんです。」
「そうなんですか・・・あっ、そうそう・・・Hって言えば・・・・」

・・・と、
彼女、話を続けたんです。


・・・・・・・・・・・

去年のちょうど今頃なんだけど・・・
Hのあるホテルに泊まったのね。
そのホテル・・・なかなか評判がいいところで、
お客様にも喜んで貰えるところなんだけど・・・・・

ここの乗務員室・・・出るのよ・・・アレ・・・

その日ね・・・
私が通された部屋は、
窓から海の見えるナカナカのいい部屋だったの。
夕食後、
缶ビールを飲みながら、窓越しに夜の海を見てたんだけど・・・
(何故か、旅行業界の女性は飲む人が多い)

何気なくね・・・そう、何気なくね・・・窓に目の焦点が合ったの。
そしたら、
窓に映る自分の後ろに、
おかっぱの女の子がうつむきながら立っていたの。

ビックリして振返ったけど誰もいないの。
窓に目を戻して見ても、やはり女の子は映っていないの。

悪酔いしちゃったかなと思って、
明日のこともあるし・・・顔を洗って寝ることにしたの。
それで
洗面台に立って鏡に向かうと、
さっきの女の子が私の後ろに立っているのが映っているの。
恐る恐る振り返ったんだけど誰もいない・・・・。
・・で、
洗面台に向き直った瞬間、
ひざから腰にかけて、ガバッ!・・・って何かが抱きついてきて・・・
見ると、
鏡に映っていた女の子がいるの。
振り払って逃げようと思ったんだけど、
骨が折れるかと思うくらいに強い力で締め付けてくるから、
全然身動き取れなくて・・・・

「は・・離して、助けて・・・。」
「どうして・・? おねぇちゃんも私を置いて行っちゃうの・・・・」

次の瞬間、
女の子の顔がドロォ〜・・と腐ったように溶けはじめて・・・・

「いやぁー!!」

私が悲鳴を上げると、
女の子の手の力が一瞬弱まったので、
そのまま手を振り解いて、近くのガイドさんの部屋に逃げたのよぉ・・・
その晩はガイドさんの部屋に一緒に泊まったんだけど、
ホント・・・怖かったァ〜・・・

・・・・・・・・・・・


「怖ァ〜〜・・・で、そのホテル・・・どこなんですか?」

「うん、ホテルRよ。」

「えっ・・・・、そ・・そこ・・・今日・・・泊まるんですけど・・・」