「気配」
東京都品川区
某シティホテル

このホームページが「旅」をテーマにしている事もあって
紹介するホテルはどうしても観光地・温泉地が中心なりがちですが、
なかなか、どうして、都心のホテルでも怖いところが結構あるのです。

今回はそんな都会のホテルの中から一軒・・・・・

品川にあるこのホテルは交通の便が良い事もあり、
ビジネスマンの東京出張の拠点としてよく利用されます。
この話は、
いつもお世話になっているM電器産業のT課長に伺ったものです。

深夜、12時前・・・
Tさんがベッドに横になり本を読んでいると・・・
突然、
部屋のドアが開く音がしたのです。

ギィー・・・バタン!

誰かが勝手に部屋に入ってきたのかと思い、
ドアのほうに行ってみましたが、そこには誰もおらず、
ドアの鍵も閉まったまま、ドアチェーンもかかったままです。

「おかしいな? 夜遅いから、隣の部屋の音が響いたのかな?」

Tさんはベッドに戻り、再び本を読み始めましたが、
10分もしないうちに眠気に誘われ、部屋の灯りを消しました。
すると、
部屋の隅から人の気配がするのです。

「誰だ!」

Tさんは飛び起き灯りを点けましたが、そこには誰もいません。

「気のせいか???」

Tさんは、不気味に思いながらも再び灯りを消すと床につきました。
しばらくすると、
今度は部屋の中を歩き回る足音がしてきたのです。
フロアの薄い絨毯(マット?)を踏む・・ズゥム・・ズゥム・・という音が・・

Tさんは、慌てて飛び起き再び灯りを点けました。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・何なんだこの部屋は??」

しかし、
部屋を代えて貰おうにも、その日のホテルは満室。
ホテルを移るにしても、
こんな時間に他のホテルが取れるとも思えないし、
指定以外のホテルに泊まった場合は会社から宿泊費がもらえません。
しかたなく、
Tさんは灯りを点けたまま眠ることにしました。

とは言っても、
恐ろしい事に代わりはなく、壁側に寝返りをうつ形で目を閉じたのです。

しばらくして、
Tさんがウトウトして来たとき、
突然、
ベッドに誰かが腰掛けたのです。
ちょうどTさんの腰の辺り・・・
ベッドのマットがググッとお尻の形に沈み込んだのが解るんです。

だ・・・誰かが俺の後ろに座ってる・・・・

ブツ、ブツ、ブツ、ブツ・・・・

さらに、
ベッドに腰掛けた何者かは、
聞き取れないような小さな声で何かを呟いています。

ブツ、ブツ、ブツ、ブツ・・・・

Tさんは恐ろしさの余り動くことが出来ず、
心の中で「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」とお題目を唱えたそうです。

やがて、
ブツ、ブツ、ブツ、ブツ・・・・という呟きが聞こえなくなると
背中の何者かは、ベッドから立ちあがりました。
その直後、

カチッ・・・ガララッ・・・・

窓のロックをはずし、窓を開ける音が聞こえてきました。
一瞬、外から冷たい風が吹き込みます。

・・・・そして・・・静寂・・・

数分後、
Tさんが恐る恐る窓のほうに目をやると、
窓のカーテンは閉じられたまま、窓が開けられた形跡はありません。
また、
その後は人の気配も感じることはありませんでした。

一睡も出来ず朝を迎えたTさんは、
チェックアウトの際に、
フロントマンに昨夜の出来事を問いただそうと思いましたが、
真相は自分が見たものが全てを物語っているんだろう・・・と、
そのままホテルを後にしたそうです。

5階のこの部屋・・・今夜も姿の無い誰かが・・・・