「かつら剥き」
新潟県
とある老舗温泉旅館
(この話・・地元では結構有名らしいので温泉名は伏せさせて下さい)

ふとした事からお知り合いになったSさんは、
大阪市内で奥様と小料理屋をされている、とっても粋なおじ様です。
そのSさんは若い頃、
修行の為に「流し」というか「渡り」の板前をしていた事があるそうです。

Sさんが新潟県のある老舗温泉旅館で働き始めてスグの話です。
その日、
Sさんの歓迎会という事で厨房の皆で仲間と飲みに出かけ、
旅館に帰ってきたのは12時近く。(Sさんは住込みで働いてたので)
そぉ〜っと、
従業員専用口から入って行くと、
厨房の勝手辺りが明るいことに気づいたそうです。

「あれ、おかしいな・・誰か残っているのかな??」

行ってみると、
男の子が一生懸命かつら剥きの練習をしています。
若いのが時間を惜しんで頑張っている様子に、
Sさんは、ちょっとコツでも教えてあげようと声を掛けたそうです。

「頑張ってるな。ちょっとコツでも教えてあげようか?!」

すると、
男の子はビックリしたようにSさんを見ると、
立上がり嬉しそうに微笑むと、そのままスゥーと消えてしまったのです。

Sさんは、
一瞬、驚いたものの
かなりお酒も入っていたので幻でも見たんだろ・・・と、
大して気にもせず部屋に戻って、そのまま寝てしまったそうです。

翌日、
まかないを食べながら、
先輩の板前に昨夜の男の子の話をすると・・・

「あー、それはK男だ。また出てきたんだなー」・・と

先輩の話によると、
3年程前、K男という大変真面目な男の子が働いたのですが、
深夜、家に帰る途中で交通事故で亡くなったというのです。

Sさんは、
この老舗旅館で働いていた2年程の間に
5〜6回、この少年の霊を見たといいます。
おそらく今でも・・・。