「石鹸 」
長野県白馬村
某ロッジ

8年前・・・大学3回生の冬・・・・、
MoMoがツアコンのバイトを始めて約半年・・・・、
スキーバスツアーの添乗に行った時の話です。

今では、
スキー、スノボー人口は減少の一途ですが、
当時は、
スノボーが流行り始めた頃で、
毎週末には、スキーバスが、三宮、梅田、難波等のターミナルに
鈴なりになってたんですよ。

スキー大好きのMoMoにとっては、
スンゴクおいしいバイトだったんです。

さて、
問題のロッジは、
長野県白馬の某スキー場の近くにあります。
 (現在も営業中のロッジですので、スキー場の名も伏せます。
  最近はロッジ形式の宿泊施設は少ないので・・・・・・・)

このロッジは、
マスターのお人柄そのままに、
アットホームで心が和む素敵なロッジです。
ホテル等では絶対に味わえない暖かさがあるんです。

その日、
私は夕食前にお風呂に入る事にしたんです。

大浴場 (まっ、実際は小浴場なんですけど・・・) には、
誰も入っておらず、MoMoの貸切状態。

ゆっくり、湯船につかって・・・・・

「ふにゃぁ〜〜  いい気持ちぃ〜  」

さて・・・身体でも洗おっかな・・

「あっ、石けんがない・・・!」

MoMoは、
荷物を減らすため、
ホテル等で調達できる物は、ホテル等の物を使う主義なんです。

「困ったわねぇ・・・・」

その時です。
「ごめんなさぁ〜い、石鹸でぇ〜す。」

見ると、
ロッヂのお嬢さんらしい高校生位の女の子が、
ニコニコして立っています。

「あっ、ありがとうぉ・・・」

「いいえぇ〜、また何かあったら呼んで下さいねぇ〜」

そう言うと、
女の子は、パタパタ・・・と、嬉しそうに走っていきました。

「さっすが、ロッジのお嬢さん、愛想がいいわぁ・・・」

MoMoは、
感心しながら、身体を洗って・・・また湯船につかったんです。

「ほえぇ〜・・・・極楽じゃぁ〜・・・」

そこに、
ロッヂの奥さんが入ってきたんです。

「ごめんなさいねぇ、石鹸、切れてたでしょう・・・・。」

「あっ、いいえ、お嬢さんが持ってきてくれましたよ」

「あっ・・・あの子が・・・ですか・・?!」

「えぇ、高校生くらいのカワイイお嬢さんが・・・・」

奥さんは、静かにこう言いました。

「あの子は2年前に死にました。」

「そ・・そんな、だって、石鹸がそこに・・・・」

しかし、
そこに石鹸は・・・・・・・ありませんでした。

私は湯船の中にいるにもかかわらず、
背筋が寒くなりました。

石鹸の香りに包まれながら・・