「姿見」 (全身を写して見ることができる大形の鏡のこと)
秋田県 田沢湖町
ホテルSからの他館先

旅行シーズン中になると、各ホテルとも満室です。
そうなると、当然、私達乗務員の部屋も・・・・。

まぁ、それでも、私達添乗員はお客様と同じホテルに泊まりますが、
ドライバーさん、ガイドさん等は、
別のホテル・・・大体は民宿です・・・に泊まったりします。
私たちは、これを「他館」とか「放り出し」とか言っています。

「放り出し」って言い方をすると、とんでもない感じがしますが、
テレビやエアコンもないようなホテルの乗務員部屋よりは、
よっぽど、マシ・・・、人情味もあるし。

さて、今回の話は、
先日一緒に仕事をした運転手Nさんの話です。

旅行シーズンということもあって、
その日、Nさんの泊まりは他館。
用意された部屋は2階の和室でした。
Nさんは早速、スウェットに着替えて、
夕食を食べに1階の食堂に降りていったそうです。

あっ、そうそう、
私達、乗務員は、あまり備付けの浴衣は着ません。
宿泊施設に着くと持参のスウェットに着替えてくつろぎ、
そのままパジャマとして寝るんです。

・・・・で、
夕食中に、宿の人が、部屋に布団を敷いてくれてたので、
Nさんは部屋に戻るなり、すぐ布団入り仰向けになったそうです。
彼は、寝つきが良い方らしくて、
いつも布団に入ると、5分もしないうちに熟睡しちゃうんですって。
 (・・・・寝つきの悪いMoMoとしては、うらやましい限りです。)

でも、その日に限って、、
何か落ち着かないというか、そわそわして、いっこうに寝付けません。

「うぅ〜〜ん・・・・、なんか寝付けないなぁ・・・・・」

Nさんは、寝返りを打って、横になってみました。
真っ暗な中、
目を開けてしばらくすると、次第に目が慣れてきて、
部屋の様子がうっすら見えてきます。

そして・・・・・、Nさんの目の前に見えたのは、
布団の横・・・というかにある目の前の姿見の鏡。
もちろん鏡には自分が映っています

ボーッと自分の姿を見ていてると、妙な事に気づきました。

鏡に映っている自分は立っているんです。

「誰かいるのか?」
Nさんは、とっさに後ろを振り返りましたが誰もいません。
そこで、恐る恐る、もう一度姿見を見ると・・・・・、

姿見の中にいるのは、
自分と同じ顔、同じスウェットを着た人物・・・間違いなく自分です。
しかも立っているんです。

Nさんは、電気をつけようと手を伸ばしたんですが、
その瞬間、身体中ががしびれて動けなくなったんだそうです。
姿見に映る自分から、目をそらすことも出来ません。

姿見の中の自分は、うっすらと笑うと・・・・・、
鏡の中から、スゥ〜と抜け出て来たんだそうです。
そして、横になっているNさんの上に・・・・

Nさんは、そのまま意識を失い寝てしまったそうです。

翌日、
宿の人に「あの鏡・・」と言いかけると・・・

「言わないほうがいいよ、自分だから怖くないでしょ、
 言わないほうがいいのよ、言わないほうが・・・・・」

その後、
Nさんに奇妙な事は起こっていません。
でも、今でも、部屋に姿見があると、
その事を思い出して眠れなくなるそうです。

でも・・・・、
「言わないほうが良い」って言われたのに、
MoMoに言って大丈夫なのかしら。
MoMoって・・・・、そういう話はHPにスグ載せちゃうよ。