「濡れた足音」
新潟県
親不知海岸 (おやしらずかいがん)、某老舗旅館

新潟県、親不知海岸・・・・・・、
明治時代に国道が出来るまでは、旧北陸街道最大の難所・・・・。

国道ができる以前は、
旅人は、崖下の狭い砂浜を命がけで走り、
波が来ると、崖下に掘られた小さな洞穴に飛び込んで逃れ、
波が引くと、また、狭い砂浜を次の洞穴まで走る。
これを繰り返し、この海岸を通過したそうです。

足の遅い者、女性、子供、お年寄りの中には、
次の洞穴にたどり着く前に、波にさらわれ命を落とす者が、
非常に多かったといいます。

それこそ、命がけの海岸・・・
自分の命を守ることに精一杯で、
親の事も子の事も、かまっていられないような難所・・・
まさに・・・、親不知、子不知の海岸だったんです。

この話は、
この親不知海岸の近くの某老舗旅館に伝わる話です。

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江戸時代、
ある若い僧が、この狭い砂浜を走っていると
急に大きな波が押し寄せたために、
僧は、あわてて近くの穴に飛び込んだそうです。

そこには若い女性が1人・・・・・・・・・。

この穴は小さくて2人は入れない。
しかし、次の穴には遠い。
とても間に合わない。

その若い僧は、あろうことか、
女を穴から引きずり出し、大波の中に投げ捨て、
自分だけが助かったそうです。

その夜、
若い僧は、この老舗旅館に宿泊したそうです。

深夜、
僧は、「ベチャ、ベチャ、ベチャ・・・・」 という足音に目を覚まします。

ベチャ・・・・・・・ベチャ・・・・・・・ベチャ・・・・・・・・ベチャ・・・・
「ここでもない」

ベチャ・・・・・・・ベチャ・・・・・・・ベチャ・・・・・・・・ベチャ・・・・
「ここでもない」

その濡れたような足音は、
一つ一つの部屋を確かめながら、若い層の部屋に近づいてきます。

ベチャ・・・・・・・ベチャ・・・・・・・ベチャ・・・・・・・・ベチャ・・・・
「ここでもない」

ベチャ・・・・・・・ベチャ・・・・・・・ベチャ・・・・・・・・ベチャ・・・・
「・・・・」
「ここかぁー」

翌朝、
親不知海岸の小さな穴の中で、
この僧の溺死体が発見されたそうです。

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実は、この話、ただの昔話じゃないんです。
今でも、この旅館の乗務員室では、
深夜、廊下を歩く、濡れた足音が聞こえてくるんだそうです。

ベチャ・・・・・・・ベチャ・・・・・・・ベチャ・・・・・・・・ベチャ・・・・、って・・

また、MoMoの大好きな佳奈先輩は、
夜中、窓をたたく音に目を覚ましてみると、
窓に真っ青な女性の顔が張り付いていたんだそうです。

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佳奈先輩 ⇒ 添乗日記/よもやま話/2002.1.7を参照してね。